技術経営戦略研修(第2回)変革期のリーダーが学ぶことは何か

技術経営に役立つ名将ハンニバルMM演習

- 軍事戦略演習で学ぶリーダーの実践力 -

講 師:奥出 阜義(おくで・あつよし)(軍事戦略家、元防衛大学校教授)
アシスタント講師:小平 和一朗(こだいら・かずいちろう)(当財団専務理事・博士(学術))

日時 2018年8月25日(土) 13:00〜17:00 (講義、演習など)
場所 一般財団法人アーネスト育成財団事務所内 アクセスへ
参加費 10,000円(税込)(終了後に懇親会を開きます)
定員 最大9名(定員になり次第締め切ります)
申込方法 FAX 03-6276-2424 または Eメールoffice@eufd.orgにて
主催 一般財団法人アーネスト育成財団

パンフレット(388KB)

講演概要

軍事戦略や戦術を理解し、創造し、経営戦略を立案 戦いを始めるにあたってリーダーは、戦う相手や自軍のさまざまな要素で構成される軍事力を理解しないで戦略を組み立てることはできない。ビジネスでいえば、自社の技術力や戦う相手の技術力を理解せずに経営をすることはできないといえる。問題を起こした企業リーダーが「まさかの事態を想定していなかった」と言い訳をよくするが、戦略力の11原則を理解し、活用していたらそのようなことは起こらないという。戦術を理解し、有限の時間内で創造してこそ時代の変革に対応できる、イノベーションと言われる変革を作りだす戦略となることを忘れてはならない。戦闘機は、離陸する前に目的と着陸する時間と場所を計画して飛び立つ。時間は有限であることを知るべきである。古代ハンニバルの戦いでは大量破壊兵器がなく、リーダーの人間力こそが戦略勝負の主体であった。それはビジネス戦略の人間力に相通じる。

研修時間割

13:00~14:00 講義:「軍事戦略の基礎」
14:00~15:00 MM演習1
15:00~16:00 MM演習2
16:00~17:00 総合まとめ

【講師略歴】

奥出阜義(オクデアツヨシ)氏
1968年防衛大学校卒業、83年陸上自衛隊幹部学校教官、92年第4対戦車ヘリコプター隊初代隊長、96年第1ヘリコプター団本部高級幕僚。98年防衛大学校教授、2000年定年退官、富士重工戦略アドバイザー、05年NPO法人国際戦略シナジー学会専務理事、09年弁護士法人フェニックス戦略スタッフ。 (著書)『ハンニバルに学ぶ戦略思考』ダイヤモンド社(2011)

【講師略歴】

小平和一朗(コダイラ カズイチロウ)
1970年芝浦工業大学卒業、同年大倉電気(株)入社、技術部長、情報通信事業部事業部長を歴任し2002年退社。2004年(株)イー・ブランド21設立し代表取締役・経営コンサルタント(現在)。2007年芝浦工業大学大学院工学研究科博士(後期)修了し、学術博士。2012年当財団を設立し専務理事に就任(現在)。

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研修『技術経営に役立つ名将ハンニバルMM演習』

- 軍事戦略演習で学ぶリーダーの実践力 -

講 師       奥出阜義 軍事戦略家、元防衛大学校 教授
アシスタント講師  小平和一朗当財団専務理事・博士(学術)

平成30年8月25日財団にて、奥出阜義(おくであつよし)軍事戦略家・防衛大学校元教授を迎えて『技術経営に役立つ名将ハンニバルMM演習』と題して、技術経営戦略研修(第2回)を開催した。奥出は陸上自衛官、陸上自衛隊幹部学校教官、防衛大学校教授を歴任した日本の戦略教育の第一人者で、カルタゴのハンニバルの戦略研究のスペシャリストで、実践的な軍事戦略家である。軍事戦略を学んだことのない日本人は、いつのまにか国際社会で通用しない甘い戦略作りしかできなくなった。本研修のアシスタント講師を小平和一朗専務理事が担当した。

セミナー写真

MM(マップマヌーバー)演習とは、図上で行うゲーム演習のこと。戦略決断力を向上させる方法としてグローバルに用いられている。戦略決断力の向上に役立つ。 写真中は、講師の奥出阜義講師「愚か者は自分に学び、賢人は歴史に学ぶ」と教える。講座ではハンニバルを取り上げ、戦争を疑似体験しながら戦略を教えてくれた。

軍事教育を経営に活かす
ハンニバルMM演習は、財団が出来て間もない頃に第1回を開催した。この演習、兵役がない日本人はやらないが、海外のビジネスマンは軍事教育で受けている。MM演習を学びたいと企画した。

講演概要(奥出講師)

リーダーは戦いに当たり戦う相手や自軍の様々な要素で構成されている軍事力を理解して、戦略を組み立てる。ビジネスでいえば、自社の技術力や戦う相手の技術力を理解して、経営をすることと同じである。問題を起こした企業のリーダーが「まさかの事態を想定していなかった」と言い訳をするが、表1に示す奥出の戦略力の11原則を理解し、活用していたらそのようなことは起こらない。
戦術を理解し、時間内で創造してこそ時代の変革に対応できる変革を作り出す戦略となる。戦闘機は、離陸する前に目的と着陸する時間と場所を計画して飛び立つ。時間は有限であることを知るべきである。

表1 奥出の戦略力の11原則

表1

人間力こそが戦略勝負の主体
古代ハンニバルの戦いでは大量破壊兵器がなく、リーダーの人間力こそが戦略勝負の主体であった。それはビジネス戦略の人間力に相通じる。防衛大学の教官の時に、軍事教範に関する技術面や戦略面の資料が一万頁ほどあるが、唯一ハンニバルのところだけ「理想の指揮官」とあって古代の戦争が載っていたので興味をもった。

イラク戦争、ハンニバルが原点
多国籍軍がイラクに進行した湾岸戦争の時のトップリーダーがパウエル将軍である。イラク軍が3万~15万人の戦死者を出したが、多国籍軍は百~三百人の犠牲者であった。その戦争のベースが、実はカンネの戦いであった。それを現代兵器に置き換えて作り直したのが、パウエル将軍と言われる。
将軍はベトナム戦争のとき、その理論構成をベースにしたのがカンネの戦いであった。カンネの戦いとは、ポエニ戦争の一つで紀元前8百年頃のカルタゴは、商業国家、地中海の商業国家を船で行き来して裕福だった。
それから4百~5百年後、ローマが軍事システムを中心に展開して、地中海を含む覇権競争になった。ポエニ戦争は百年位続く。一次、二次、三次があって、一次のときにハンニバルの父親が将軍であったがローマに負けてしまう。二次のときが26歳の時、ローマに進軍する。
一次のときにローマに負けたので、ハンニバルグループはスペインにいた。ハンニバルは、単なる軍人というより、交易経営で資金を貯め込み、傭兵を集めスペインから像を30数頭、兵は5万人とか8万人とか言われているが、ピレネーを越え、アルプスを越え、ローマを撃滅するためにイタリアに進撃する。父親の復讐をするためにというのもあったらしい。最大の山場がカンネの戦い。
(以下略)

地図を前に「カンネの戦い」の演習説明を受ける参加者

まとめの議論

戦略なしで戦うことはできない

アシスタント講師(小平):今回の研修が経営に生かせるかを確認していきたい。

受講生(小貫智太郎群馬セラミックス社長):敵は何をしてくるかを考えて、それを踏まえて作戦を立てる。仕事にも生かせる。

講師(小平):敵は見えなくても見えるようにするという指導。分析した上での戦略立案を学んだ。

受講生(瀧川淳エヴィクサー社長):進撃地をどう把握するかを瞬時に感じ取ってというところが印象的だった。決めつけずに、状況を常に色々な角度から見なければ駄目なのは、ビジネスでも一緒だ。

受講生(鈴木義晴スプラッシュ社長):訓示で感情的な部分、心情的な部分を言ってしまった。他人の発表では、訓示に具体的な戦い方や状況が示されていた。自分は具体性が欠如していた。

受講生(高木バンガードシステムズ営業部長):今回の戦略の話はモデルとして分かりやすい。戦略を立てる前に、目的を明確にすることが大事だと思った。

受講生(砂永晃HISCO社長):何が有利で何が不利なのか。他社との差別化をするための戦略を考えたいと思った。

受講生(石井唯行ワンズディー社長):奥出先生は、戦略の失敗は戦術では補えないという。戦略をまとめていくことの大切さを改めて感じた。訓示でリーダーがどういう言葉を投げかけるかで、部下の動きが変わること、言葉の選び方とか、自分の苦手をどう補うか。

受講生(中野祝エイワンプラス社長):今回勉強で自然環境、相手がどう思っているかを分析、図式化して、紙に整理して、それを部下に形で説明していく。言葉だと右から左に流れる。言う方も受けるほうも感情的。感情が前面に出る。図とか模型を使って立体的に説明すれば伝わる。

受講生(牛坂光イーレックス営業企画課長):今回のケースはローマ軍を倒すという目的に対し色々なアプローチがあることを学んだ。周りの意見も聞きながら色々と考えたい。自分が前に向いて明確に方向性を示すことは重要だ。

カンネの戦いを演習してる様子(その1)
左から瀧川淳エヴィクサー社長、鈴木義晴スプラッシュ社長、小貫智太郎群馬セラミックス社長

カンネの戦いを演習してる様子(その2)
左から高木バンガードシステムズ営業部長、砂永晃HISCO社長

カンネの戦いを演習してる様子(その3)
左から中野祝エイワンプラス社長、石井唯行ワンズディー社長、牛坂光イーレックス営業企画課長

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戦争は時間軸で勝負をしている

講師(小平):「ジェット機が飛び立つと着陸という時間軸は決められている。離陸する前に、時間、空間、燃料などをシミュレーションして離陸をする」と奥出。我々は、仕事で計画を立てるときに、時間軸に甘い。

講師(奥出):人間、永遠に生きるわけではない。時間には限界がある。飛行機乗りが象徴的だ。
今日の演習で「あと10分」とあえて強調をしているのはそういうことである。1時間ずれたらローマ軍が渡河してしまう。有利な態勢を取られてしまう。時間を10分前に最終決心をし、命令は10分後にするという設定をしている。

講師(小平):仕事のとき、結構抜けてしまう可能性があるが、基本的には、下まで何をやるかを伝えなければ戦争は始まらない。ややもすると、仕事では曖昧のまま進めてしまう。戦争では、戦略を下まで伝えずに始まることはない。

講師(奥出):戦争でトップから何十万人にリアルタイムに、同時に認識させるために米国は、パワーポイントのシステムを開発した。パワーポイントとは、パワーがそこにあるということである。

講師(小平):戦争が良いわけではないが、ビジネスをするには、理解しておかなければならない。海外の先進国のビジネスマンの多くは、軍事教育を受け、戦い方を学んでいるのが常識。それを前提にビジネススクールがある。我々はそこが抜けている。頭だけの戦略でやるからビジネスで負ける。奥出の研修は色々な経験に基づいた教育だった。

講師(奥出):ハンニバルを通じて歴史との出会いをし、戦略を学んだ。「愚か者は自分に学び、賢人は歴史に学ぶ」という有名な言葉がある。自分にというのは「自己の経験に」ということである。
歴史というのは、何千年という流れがあって、人間というのはその上にチョコンと乗っている。そういうようなことを踏まえて、流れをどう読むか、将来をどう読むかということを考える癖をつけると良い。

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