西河技術経営塾・上級コース検討研究会

2015.06.02 上級コース検討研究会(第7回)

<議事録> (216KB)

前回に引き続いて研究員の山中隆敏から「MOT 1.0-MOT 2.0二次元マトリクス整理・事業マップ」について、淺野昌宏理事から「上級コース・カリキュラムで追加あるいは強化すべき項目」について、小平和一朗専務理事から「西河技術経営塾」についてと「西河技術経営塾で教えている技術経営(MOT)とは何か」について、大橋克已研究員から「演習型講義のイメージ」について、前田光幸研究員から「ケース・メソッド演習について」について報告があり、意見交換が行われた。

1.MOT1.0-MOT2.0の整理:山中隆敏研究員

<議事録7-1> (335KB)

2.上級コース・カリキュラムで追加あるいは強化すべき項目:淺野昌宏研究員

2.1 思考・志

経営者としては、人間的な基礎力が必要であり、これを継続的に養ってゆくことを目的として、古典をベースに、倫理思想や経営哲学を学ぶ道筋を案内することはどうか。
また、これらを通じて、企業経営者としての社会的責任への理解を深めてもらいたい。
例えば、中国の古典、「論語」、「韓非子」、「孫子」、「史記」や、ヘロドトスの「歴史」、カエサル「ガリア戦記」、マキャベリ「君主論」、クラウゼヴィッツ「戦争論」などを、「経営者が推薦する図書100冊」などとして紹介し、いくつかを説明する。そして、必要に応じて、あるいは時間を見つけて読むことを奨励する。

2.2 人事労務管理

内容的には実務の話であり学問的ではないが、ベンチャーや小企業が成長してゆく過程で、経営者としてぶつかる問題なので、聴講しておくことは役に立つと思われる。
例えば、項目をあげると次のようになる。
(1)採用、(2)人材育成、(3)給与・賞与・退職金、(4)評価・資格制度、(5)組合、(6)服務規律、(7)福利厚生など
これらは、演習の中で取り上げる事も出来るかもしれない。

3.西河技術経営塾について:小平和一朗専務理事

<議事録7-3> (106KB)

上級コースの人たちの対象はどうなのかという話題で、公益認定申請の際に西河技術経営塾について内閣府の担当官に説明資料として整理した内容を報告した。

3.1 西河技術経営塾の事業の内容

本実践経営スクール(西河技術経営塾)は、基礎コース、リーダーコース、指導者コースの3つの階層で構成している。
「基礎コース」は、技術経営実務に役立つ基礎知識および創造力の鍛錬に取り組む。
「リーダーコース」は、技術経営人財の養成およびリーダー力の向上に取り組む。
最上位の「指導者コース」は、技術経営人財を指導・育成できるコンサルタント、つまり当実践経営スクールの指導者(教員)を育成に取り組む。
現在、実践経営スクール・基礎コース(事業1)に取り組んでいる。
リーダーコース、指導者コースの具体化に向けて、上級コース検討研究会(事業2)に取り組んでいる。

上級コース検討研究会第7回

小平和一朗専務理事(左)は「日本には、良い技術や技能があるが、事業化の壁は高く、
起業するベンチャービジネスは少ない。我が国の持続的な成長と活性化には、起業家や
事業家などの支援に取り組むことが急務である」との財団の設立趣意を実現する活動に
西河技術経営塾があると報告、公益性のある事業として認めてもらうために経営者の育成
に取り組み、実績を積み重ねていくと説明した。右隣は鈴木潤政策研究大学院大学教授。

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事業1:実践経営スクール・基礎コースの内容

「基礎コース」は、若手経営者から「仕事をしながら経営を学びたい」という要望から企画した。日本の経営環境で、社会のビジネスリーダーとしての経営実践力を学ぶ。経営学は複合学。それを浅く広く、機能的に連携させながら短期間に総合力を高める学習の場と、創造力鍛錬の場を提供する。
【事業1の募集方法】
ホームページ(http://www.eufd.org)での募集、財団が発行する情報紙"Earnest"での案内および支援者(約800通)に案内を直接郵送して募集している。
【事業1の選考方法】
入塾者は、担当する理事による面接試験の後、理事会にて決定する。

事業2:上級コース検討研究会の内容

大学関係者、経営研究者などが参加して、上級コースのあり方の検討を研究テーマにして取り組む。
上級コースには「リーダーコース」と「指導者コース」がある。
「リーダーコース」は、技術経営人財の養成およびリーダー力の向上に取り組むコースで、「指導者コース」は、技術経営人財を指導・育成できるコンサルタント、つまり当実践経営スクールの指導者(教員)を育成する目的のコースである。
取り組みにあたってのカリキュラム構成、学習目標の設定などが対象となる。
【事業2の募集方法と選考方法】
 研究会のメンバーは専務理事が人選し、理事会にて承認する。
【事業2の研究成果の公表方法】
研究成果は、財団の理事会に報告され、財団の西河技術経営塾の実践経営スクールの上級コースの事業企画にあたっての検討資料となる。

3.2 西河技術経営塾の5つの特徴

塾生の経営スキルが向上し、経営内容の質的な向上で、やがて社会から認められ雇用も安定し、安定した収益を上げることが出来る会社になる。
西河技術経営塾の代表的な特徴を5つ挙げる。
(1)日本型技術経営研究の成果を学ぶ
(2)実践的思考、変革的思考を塾生参加型で効率的に育成する
(3)働きながら学び、学んだことをすぐビジネスに生かす
(4)誠実な若手の技術経営人財を育成する
(5)定員5名の少数精鋭教育

3.3 経営を支える共通分野を学習する

西河技術経営塾では、モノづくり、コトづくりの専門領域を学ぶわけではない。図7.1に示すように、経営を支える「人間力」「社是・社訓」「戦略」・・「経営学(MOTを含む)」などの共通分野を学習することになる。
モノづくりの現場で豊富な経営経験や技術経営研究に従事してきた講師陣とともに、現在抱えているビジネス課題を塾生とともに解決しながら学習(座学)するとともに、実践トレーニング(演習)を盛り込んだビジネススクールである。
日本の経営環境で、社会や企業内におけるビジネスリーダーとしての経営実践力を学ぶ。

西河技術経営塾の経営に関する学習領域

図7.1 西河技術経営塾の経営に関する学習領域

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3.4 西河技術経営塾で学ぶ経営と大学院で学ぶ経営との違い

西河技術経営塾では実践的経営を教える。経営を教える講師は、経営に関する広範囲は知識を持っていなければならない。(図7.2参照)
経営は総合力である。
全ての知識を動員して経営判断をすることになる。
大学院の講座は、1つの特定の領域を専門家の先生が講義するが、西河技術経営塾では横串を刺して実務経験者が広範囲に教える。
実務では、金銭管理(会計)が各分野の横串を刺す役割を持つ。
経営の領域は広い分野の知識を浅く広く知っていなければならない。
講師全員が講師を担当する以外の日も塾生と一緒に全講義を受講する。
相互に経営学を学び合うとの姿勢で、講師全員が討議に加わる。
大学では、先生が先生の講義を聴くことはまれであるが、当塾では原則として塾長をはじめ全員が毎回聴講し、講師同志の間でも意見交換が毎回行われる。

経営学と経営に求められる知識領域

図7.2 経営学と経営に求められる知識領域

3.5 実践経営スクールは3段階で構成されている

西河技術経営塾・実践経営スクールは、図7.3に示すように、基礎コースと経営者育成コースとコンサル育成コース(研究科)の3段階で構成されている。
現在、基礎コースの第2期生(6名)が入塾し、開塾中である。
上級コース検討研究会では、「経営者育成コース」「コンサル育成コース」のカリキュラム作りの検討に取り組んでいる。

西河技術経営塾での学習目標と成果、塾生全員を経営の成功者にする

(1)塾生のブランドづくり(経営戦略)を学ぶ。
(2)「経営学は経営(プレー)をするためのルールブックである」を学ぶ。
(3)「現状のビジネスモデルを10倍にする」方法を学ぶ。
そして、成果は「塾生全員がビジネスの成功者になる」ことであり、塾のミッションは「塾生全員を経営の成功者にする」ことである。

実践経営スクール・経営者育成コース(上級コース)の受講対象者

受講対象者は、実践経営スクール・基礎コース修了生同等の知識および能力を持っているものとする。

実践経営スクール・コンサル育成コース(上級コース)の受講対象者

受講対象者は、実践経営スクール・経営者育成コース修了生もしくは同等の知識および能力を持っているものとする。

 

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実践経営スクールの階層別3つのコース

図7.3 実践経営スクールの階層別3つのコース

<意見交換>

上級コース設立の目的は「基礎コースを教える人たちをどうやって作っていくか」にある

鈴木潤政策研究大学院大学教授:受講対象者・ターゲットをもっとちゃんとセグメンテーションした方がよい。初級コースには「中小企業の二世経営者」という明確なターゲットがある。上級コースは「初級コース修了者の知識と同等」というのは少し幅広い。前から議論しているように、例えばスピンオフでハイテクベンチャーを作る様な人のような特殊なターゲットも対象としていけるのかとか。

小平和一朗専務理事:後者は今のところ考えていない。上級コースはあくまでも「基礎コースを教える人たちをどうやって作っていくか」だ。

鈴木:先ほどのMOT2.0の議論ではそういう話では必ずしも無いと、私は思っていたのだが。

小平:MOT2.0の議論は概念的にはあるが、まだ未消化状態だと思う。今の上級コースを検討している上で出てきた議論なので、今はそれを否定も肯定もしていない段階だ。

鈴木:5名厳選という方針をそのままやるとしたら、相当ターゲットを絞ったリクルーティングをするべきではないか。 受講生間に差がありすぎるとカリキュラムが絞れない

小平:カット・アンド・トライで試行錯誤している最中なので言いにくいが、現実的には受講生の中でレベル差がある。(しかし、塾を進めるのに問題とは思ってない。)

鈴木:大企業で技術者として成功してきて、そこを飛び出して「新しい事業をやってみよう」という人と、親から家業を引き継いだ人では、同じ内容で上級コースを含めてやるのは非常に疑問に思う。 

小平:上級コースになるとそう思う。そこはこれからの議論と整理が必要。

加納信吾東京大学大学院准教授:セグメンテーションはMOTの上級になっているのだから、やはりエンジニアなり技術なりのフレーバーがある人たちだろう。「それはどういう人達なのか」というプロファイリングをやって欲しい。
(以下、略)

4 マネジメントとリーダーシップ(技術経営とは何か):小平和一朗専務理事

<議事録7-4> (1354KB)

明日(2015.6/3)に行われる『マネジメントとリーダーシップ』と題する講義の資料の一部分を抽出して、技術経営をどう経営塾で教えているかの事例を報告した。
特別に高級な技術を教えている訳では無く、ビジネスには何においても技術が絡んでいる事を教えている。この様な事を他のビジネススクールでは教えていないという事を説明したい。

小平和一朗専務理事

小平和一朗専務理事は「問題とは、 目標(理想、夢、あるべき姿)と、現状、
現実とのギャップをいい、目標があるから問題が起きると言いたい。その問題
解決のための戦略立案である。 戦略は戦術、戦力(技術力)に裏付けられて
いなければならない」と技術経営をいかに講義しているかのなかで報告した。

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<意見交換>

日本の強みである創意工夫は技術である

加納:何でも技術だと言っているが、技術を抜いても成立する。

小平:技術を抜いて、経営は出来ない。

加納:何を「技術」と呼ぶかに掛かっている。

小平:職場改善も、技術力によるものである。

加納:それを「技術」と呼ぶのであれば、何でも「技術だ」と言えてしまう。

小平:その通りである。ところが経営学では、その技術を教えていない。

加納:「サービス」だって「技術」なんだと。例えばディズニーランドのマニュアルだって「技術」の固まりだと言えると。何を「技術」と言うかの問題そのものだ。これが「技術経営だ」と言われると、みな違和感を感じるかもしれない。

小平:違和感は感じない。

加納:そこが分りきっている人には感じないだけで、分らない人には違和感を感じるかもしれない。

小平:違和感を感じる人は、技術経営塾に来なくて良い。皆さん意外と技術の存在を知らないで経営をしている。

加納:それを「創意工夫」と言うか「技術」と言うかの差もある。

小平:「創意工夫」は「技術」である。ただし米国人は、米国型経営においては管理が出来なくなるので創意工夫をしては困ると考えている。「それで、創意工夫は戦略では無い」と日本の経営に対して言ったのだが、それが日本の強みだと思う。

加納:ここで言っている「技術」の範囲は何なのかという所がものすごく広く感じる。「技術経営」と呼んでいるのか「X経営」と呼んでいるのか、ほぼイコールだ。

文系の経営学者には、この「技術経営」の説明ができない

小平:いま西河技術経営塾では「こういう技術経営を教えているのだ」と言う事を分って頂くために説明している。そういうのを「技術経営」と感じていない方が多いというのも分って頂きたい。

加納:この技術経営を「経営」と呼んでも何ら違和感がない。

小平:その通りだが、経営学と一般的に言われている文系の学者には、残念ながらこの「技術経営」の説明ができない。事例に出した、キャノン電子の酒巻久社長メッセージを理解することはできない。

加納:この「技術経営」と「経営」の 差分が、依然として暗黙知的である。

小平:私は役に立っていると思っているのだが。

大橋:暗黙知として役に立っている。

鈴木:ドラッガーの野中郁次郎氏も藤本氏も、技術経営だと自分達は思っていない。

小平:確かに言ってはいないが、私はそれも技術経営を語っていると利用している。

加納:そこの差分が暗黙知だ。

小平:このキャノン電子の酒巻久社長とは議論した事があるが、かれはドラッガーを使っているだけで、彼がやった実践的な手法は、そうは簡単には他人が真似することは出来ない。

加納:言わんとする事は私には伝わってくるのだが、この「実践的な経営」と呼んでいるのと「技術経営」と呼んでいるのとに差がない。なぜそこに「技術」という言葉を使うのかというのが最大の疑問点である。そこに何か「X」があるのは分る。「X」を表現しきれなくて「技術」と呼んでいるだけのようにも聞こえる。

小平:説明は可能だ。個別性があって講義で一括しての網羅的な説明は出来ないが、相手から情報を個別に引き出して、個別問題を技術的に説明し、解決することはできる。

加納:何か問題が起こった。それを解決する。それを「ソリューション」と呼ぶか、「テクノロジカル・ソリューション」と呼ぶかの違いではないか。解いているソリューションは同じだろう。

小平:違うと考えている。一般論でいうと、「ソリューション」は再現性保証などの数理的な論証が甘い。

加納:エンジニアがしっかり問題を解いたのであれば、自分で「テクノロジカル・ソリューション」と呼ばず「ソリューション」と呼んでいるケースはいっぱいある。

「経営」と「技術経営」の違いは何かが分からない

鈴木:正直言って今の説明では「経営」と「技術経営」の違いは、何か分からなかった。たとえば原価計算、モチベーション、プロジェクトマネージメントなどは技術を知らないと出来ないと説明されたが、それは具体的にどう違うのか。

小平:原価計算がそうだ。原価を改善するには技術が分からないとできない。例えば西河洋一(株)アーネストワン会長(理事長)のビジネスはモデル論だけで言うと技術は見えてこない。

加納:工程を1/3にするところに技術が入っていると思う。

小平:そのとおりで、工程を1/3にできた理由は、日々の改善に基づくものだ。「プロセスは戦略じゃない」と言う方もいるが、西河洋一理事長に言わせれば、継続的に(経営者と一体化して組織に)取り組んでいるのは、戦略なのではないかと。

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