HRM研究会
2016.9.30 準備会合(第2回)
打ち合わせメモ (2.27MB)
平成28年9月30日、財団にてHRM(注4)研究会準備会合(第2回)を開催した。本研究会準備会合は「グローバル研究会」での議論の中から組織や人財に関わる問題を抽出し、現状読み切れていない部分を浮き彫りにし、次の研究課題として抽出することを目的にしている。
今回の会合で前田光幸は、イノベーションを起こす、事業を水平展開する「グローバル展開のための組織論、新日本的経営」について報告した。前半が組織論で、後半が新日本型経営である。いずれも『日本的グローバル化経営実践のすすめ』の本の内容をなぞっている。
前田光幸は「日本企業は、戦後の日本的労働・雇用の3要素である終身雇用、年功序列、企業内組合が日本固有の組織風土と結合し、共同体としての強みと弱点を併せ持つ」と報告。
組織論:力がありながら実行しない
日本企業は、真面目に、勤勉にカイゼンして、技術開発も人と一緒にやってコストを削減し、効率化すれば成長できたのは90年代位まで、それだけでは駄目になった。
新興国の企業に侵食されて先細りになって戦えない時代になった。どうしたら良いか分からない経営者も多い。イノベーションをいかに起こすか、事業をどの様に水平展開していくか、グローバル展開をどの様に進めるのか。いずれも、実行する力がありながら力が発揮されていない。それらを実行するための組織と人材をどう考えるか。
組織と人材(図1)
図1の左側は生来能力で、企業が営々として培ってきた力であり、すぐに作り出せるものではない。色々な人達や色々な経験の中で生まれてきた、蓄積された力である。
右側は獲得能力で、経営の判断や意思決定で、比較的短期間で変えうる力である。イノベーション、水平展開、グローバル展開をやるには、右側のコンセプト構築力、戦略構築力あるいは戦略遂行力などを働かせないと出来ない。その上で、組織を変えていく。
左部分の中の人事・組織力は、変えなければならない。コミュニケーション力は、日本は弱い。言わなくても分かるだろうという同質社会の部分がある。会社を変える場合には必要である。
図1 組織と人財(生来能力と獲得能力)
意識変革のためのトップの仕事
人が動かないと何も起こらない。そのためにトップが何をすべきか。
15~20年前にうまく行ったやり方は、もう駄目になっている。なぜ駄目になったかを、社員に説明する必要がある。社会経済環境、政治経済環境、市場環境、競争環境、技術環境がガラッと変わっている。「昔はねえ」という話しかしないようでは、経営者は駄目である。なぜ変わっているのか、どの様に変わっているのか、それに対して、わが社はどの様に対応するのか、そのために何が欠けているか、どの様なステップでやっていくのか、様々なコミュニケーションをとらなければいけない。
危機感をどうやって作るか、これはトップの仕事である。コミュニケーション、意思決定、権限委譲、評価制度を変えないと意識は変わらない。評価制度は大事である。従来通りの減点主義とか、欠点の少ない人が偉くなる評価制度や昇進制度では動かない。
だれを社長や役員にするのか。いままでの業績を評価しながらも、こういう世の中では、こういう人間が動くぞという判断は、非常に難しい。当たり外れがある。
社長はビジョンとかコンセプトとか。どういう環境で、どこに何を運んで、何日までにどうするのかという事を、明確にコミュニケーションする必要がある。それから、ターゲットを明確にして、従業員を動員する。失敗は当たり前で、試行錯誤でやっていく。
日本企業のあるべき姿
生来能力は意思によっては、なかなか変わり難い。この中で一番のキーになるのは人事・組織力で、これは色々な所に影響力を持っている。従って人事・組織について、もう少し分析する。
典型的な日本企業
戦後の日本的労働・雇用の3要素である終身雇用、年功序列、企業内組合が日本固有の組織風土と結合し、共同体としての強みと弱点を併せ持つ。長所は、共同体的な集団力の強さ。短所は、個の発揮が弱い。ここで日米比較をし易くするために8つの項目を挙げた。
日本は、就職でなくて就社である。個人は社内で職種を選べない。忠誠心とかロイヤリイティ、集団に対する一体感は非常に強いが、短所は、そのために個が潰される、埋没する場合がある。
典型的なアメリカ企業
個人と組織は、契約関係で、個人が力の源泉、特にトップの力が大きい。集団力はさほど強くない。集団力は弱い。あるいは現場力が弱いので、トップの能力、戦略力が非常に左右する。
アメリカでもシリコンバレーとイースト・コーストでは雰囲気が違う。私の印象では、一般的なアングロ・アメリカン組織は、階層的・縦割り的である。しかし、シリコンバレーは、そもそもネクタイもしないでGパンで仕事をしている位であるから、階層の少ないネットワーク型である。
生来能力の修正(組織・人財)
生来能力も実はいじらないといけない。日本は、人事・組織力が良いかというと、必ずしもそうではない。
最初にコミュニケーションの不足が欠点である。会社の何が問題なのか社員によく分からない。不安感だけがある。この修正としては、何が問題なのかを明確化して、透明化して、それを共有化する。
二番目に集団の論理が優先されるので、良い場合もあるが、悪い場合には隠蔽・改ざん、ガバナンス不良となる。この修正には、個人が「正しい、正しくない」に対する価値判断を持ってもらわないと困るが、監査役や監査部のレベルアップで強めるしかない。
三番目のコンセンサス重視、無責任体制であるが、やはり責任体制の明確化である。取締役会に改善の余地あり。
一般の多くの会社では、取締役会に改善の余地がある。執行役の上の何人か取締役がいる。取締役は、取り締る役目であって、執行者ではない。アメリカの優れた会社での取締役は複数の部門を深く経験した人しか取締役になれない。
自分の会社、自分の産業にしか通用しない様な言葉だけで会話をしていると、他の人には分からない。だから異業種協業も必要だ。