HRM研究会

2017.3.10 準備会合(第5回)

打ち合わせメモ (914KB)

平成29年3月10日、財団にてHR研究会準備会合(第5回)を開催した。本研究会準備会合は「グローバル研究会」での議論の中から組織や人財に関わる問題を抽出し、現状読み切れていない部分を浮き彫りにし、次の研究課題として抽出することを目的にしている。
今回の準備会合では、座長の小平和一朗専務理事から『グローバルの定義の再考』という題目で問題提起がされた。本を書くときは、ある意味夢中で書いたが、改めて読み直した結果の気付きを含めて問題や課題が提起され、参加の委員相互で活発な意見交換がされた。

小平専務理事

第5回HRM研究会準備会合(3.10)で報告の座長の小平専務理事

『日本的グローバル化経営実践のすすめ』の中に「グローバル化とは何か」というタイトルの章があるので、まずそこを分析した。
そこで「グローバルの進展に伴って起きている問題、課題」を指摘しているので、それを再考してみようということである。ほかの本を見ても、結局はグローバルそのものというよりも、グローバルにおける色々な問題とか課題とかが整理されている感じである。

グローバルという言葉の定義

「グローバル」という単語一つだけでは、意味が特定できないので、グローバルビジネスとは、地球規模でのビジネスと書いた。
『日本的グローバル経営実践のすすめ』で扱っているグローバルは、ビジネスにおけるグローバル問題であり、扱っている領域は「グローバルビジネス」であろうということである。結局、地球規模でのビジネスということで、グローバルを日本語にすると地球規模となる。

海外市場(グローバル市場)と国内市場 

「海外市場」を「グローバル市場」というのかどうかは分からないが、国内市場に対して海外市場があって、ここの視点から捉えると、グローバル市場は外側にあるといえる。
言葉のニュアンスだけで「グローバル」というと、もっと広い意味が実際はあるのか。グローバル市場と国内市場を対比して考えたい。

図1

図1 海外市場(グローバル市場)と国内市場

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企業がグローバルな市場で活躍し、国民生活が向上することで日本の経済数値が改善

グローバル化の背景に何が起こっているのかを整理した。経済で成長が止まっているということで、「企業がグローバルな市場で活躍し、国民生活が向上しない限り、日本も企業も経済数値が改善することは無い」というのが私のコメントである。
なかなか実質経済が成長していないことが、原因である。その根元までは掴みきれていないが、それが成長を止めているということで、ある意味では恐ろしい程の差がついてきている。中国が時給でほとんど追いついてきたと言われている。

海外への技術流失が問題に、品質管理で技術指導

「海外への技術流失」については、日本の場合、雇用契約であまり縛っていないのでそうなのだと思うが、大規模なリストラを実施した結果、知的財産が簡単に海外に流出して、海外で働くことが出来る様になっている。
紙で契約しないとダメである。私が知っている限りでは、2000年以降くらいのリストラで、特に品質管理の人が(海外企業から)最初に呼ばれて、(仕事を求めて)どんどん行って、向こうの現地指導をした。開発部門ではない工場の品質管理者の(技術)流出については結構甘かった気がする。5年くらい中国に行って、「中国の工場を私が良くしました」という方がいました。

小林(産創コラボレーション社長):海外の会社に出張で行くと、技術顧問が日本人だ。名刺をもらって驚く。技術顧問、技術のトップは日本人だ。

小平:台湾の企業を訪問した時に同じ経験をしている。現地で働く日本人を出す。例えば「ソニーにいました」といった人たちが、打ち合わせに出てきて、この様な人たちがサポートしているから、この会社の品質、技術は大丈夫であるということをセールスポイントにしている。

小林:技術の流出というのは、人材そのもの、スキルやノウハウやいろいろなものを蓄積した人自身が行っている訳で、技術指導をラインでやっている。丸裸にしてしまって何をしているのかなと思う。その前は韓国がそうだったが、そのあと中国が追いかけてそうなった。

小平:韓国はもっとすごかった。一時は土日に派遣させていた。
あれは絶対に違法だが、お金で釣られて土日に行って指導している人達がいたという話である。
マザー工場を日本に残すという発想が無いとダメなのではないかというのも一つの話題になって、最近は、多種少量品、納期・賞味期限の短い商品や知財価値が高く機密性を保持しなければならない商品は、海外に持ち出さない方が良いのではないかという動きになってきている。それもグローバル対応の一つという言い方で考える。

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海外進出で中小企業の遅れが目立つ

「海外進出で中小企業の遅れが目立つ」ということである。中小企業の海外進出には、一つは「大企業の下請け的中小企業」で、もう一つは「No.1、オンリーワンで自社に強みを持っていて、進出していくケース」である。
中小企業でも、海外販路を独自開発してやっているケースはある。そういう時に、大手が絡むと頭をはねられたりして、市場作りが変になってしまうので、見ていると意外と皆さん独自でやっている。
「特徴のある技術を保有しておれば」という表現でいうと、「その技術に特化したグローバルな展開は容易となる」ということで、やはり、世界に通用する様な技術を持っている会社は、実績をあげることが出来ている。

日本の雇用環境の変化

「雇用環境の変化」。これは皮肉な結果であるが、「日本の優秀な技術者を日本で雇用する中国企業」ということで新聞に載っていた記事である。「東京・大手町にある中国通信機器大手の華為技術日本株式会社(ファーウェイ・ジャパン)は、日本人も貴重な戦力として、毎週のように入社式を開き、NECや日立などを辞めた社員を中途採用している」。これは2013年ころの記事かもしれない。
油断がならないというか、横浜にも、日本のパナソニックなどを辞めた人を採用している例があるという話を聞く。事業所を畳むと、外資系が横浜の閉じた工場を買ったという。そうすると、人ごと全部持って行ってしまう。
「ビジネス不調の本質は言葉だけで済むほど単純ではない」「知識偏重ではなく、創造性豊かな人財を求めるようになってきた」、このような課題を日本の場合は持っている。
「非正規労働者の不安定な雇用が、日本を弱体化」。先ほども出てきたが、これも新聞に出ていた記事である。「非正規雇用は転職も多く、人的資本が十分に蓄積されず、日本全体として膨大な損失が生じている可能性が高い」、という指摘である。また、非正規社員になると、低賃金労働者にそのままになって、二度と正規社員にはなれない制度になっているという実態。「企業リストラだけでは、国としては負のサイクルに入っている」という指摘である。

グローバル人財を受け入れるための現状の問題

「クローバル人財を受け入れるための現状の問題」として、「外国人の採用を考えた人事制度、キャリアパスが意外と出来ていないのではないか」、という指摘である。「終身雇用を原則とした組織構成である」。「現地法人では、職務給、実力主義、契約に基づく勤務を採用せざるを得ないが、国内本社での処遇には、困難が伴う」「グローバル人材が定着し、かつそれを見て他のグローバル人材が集まるシステムにできていない」「人事制度以外にも、人事評価(減点主義)と給与制度の違い」。あくまでも、グローバル人材を日本企業が受け入れるとしたら、この様な問題が起こるのではないかということである。
「グローバル人材を招き入れる仕組み」。「日本の企業の多くは、単一民族による組織構成を前提としている」ということもあって、本当のグローバル企業にするための課題はたくさんあるという指摘である。
「海外の大学院やMBAを出て留学から帰ってきても、留学体験を活かすことができる会社が少ない」ということで、これも良く指摘されている話である。
「日本の大学の問題」で言うと、「世界の最先端と評価される科学技術を教えている大学が少なく」、中国人の目線からいうと「日本の大学のレベルは低い」ということである。特に工科系でいうと、日本に最先端の人がいないのである。

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若者を取り巻く環境と意識調査消費が刹那的な商品へ動いている

馬場(朝日新聞社):今日の話は、「10の視点」から始まる前半の部分、これはデマンドサイドの視点なのである。つまり「企業を取り巻く環境」と「企業が求める人材」である。つまり視点が企業側だ。
もう一つの視点、サプライサイドというか、「今の若者はグローバル人材になりたいと思っているのか」という視点である。つまり、若者を取り巻く環境である。
日本のインフラはとても整っているし、電車は速いし、宅配便は直ぐに来るし、水は直に飲めるし、とても快適で、かつ、これは社会心理学の世界ではコンサーマトリーというが、将来に絶望している。
つまり若者を取り巻く環境のもう一つとして社会保障があって、年金は崩壊すると思っているし、自分の将来には全く希望を持っていない。
従って、今、この瞬間が楽しければ良いという価値観が非常に蔓延している。商品もクルマや家など自分の人生設計や長期的な自分に対する投資、自分が暮らすインフラへの投資をしなくなっている。
若者の消費が減っているという統計がズレているのは、昔の計り方と同じ計り方をしているからである。「家を買っているか」「家電を買っているか」「クルマを買っているか」で計る。
ところが、彼らが買っているものは、音楽を買ったり、イベントへの参加を買ったり、そういう方向に向かっている。実は、彼らの消費金額や可処分所得を比較すると、昔と変わっていない。
消費行動が変わっていて、それが非常に刹那的な商品へ動いている。つまり、彼らからすれば、なぜ、自分がグローバル人材にならなければいけないのかという視点があって、でもこれを放っておくと彼らの給与はどんどん減っていって、将来に絶望しているわけなので、本当に終戦直後に戻っている。ここまま行くと大変なことになる。中国に行った方が、給料がいいといったことになる可能性があるかもしれない。企業を取り巻く条件と企業の求める人材という観点の他に、若者を取り巻く環境と若者の将来から見ると、近未来に企業側のデマンドと若者側のサプライがクロスする部分が何かあるのではないか。そこに基点を置くと、グローバルを志向する若者を国内で調達する解が一つ見えるような気がする。

実像を見せて引き上げるマネージメント

馬場:多国籍なイノベーターに憧れる人材は、やはり若者にもいる。彼らは、そこになんとしても行こうとして、そこで学んで帰ってきて、さらに彼らが自分の周りにグローバル人材を起用して自分でビジネスをしようとしている例を、彼らだけではなくてもう一つ私は見ている。
そういうシンボリックな人材、「これになりたい」という思いで動く力が、若者は強いである。

小平:そういうのを学ばないといけない。

小林:そうである、企業サイドの思いが強い。特に、コトを生み出すという意味では、少なくとも海外の方がやはり進んでいるので、若者の思いを形にするには良いかも知れないである。

馬場:世界は違うが、野球などもそうである。いつかは大陸で投げたいという思いが、自然とグローバルを志向する訳である。

小平:確かにそうだ。

馬場:だから、やはり条件を示すことも大事だが、実像を見せて、それで引き上げるマネジメントをソフト的にでもやった方が良いのかなと思う。

小平:これからのテーマとして、そういうのも少しやってみたい。今日のヒントを元に分析して見ますが、取っ掛かりが難しい。我々は、実体験から企業側からの論理で言っているので、確かに逆の方から見直してみるというのも大切なことだと今日、気づいた。

馬場:基本的には、ドメスティックかつ近未来しか見ていない若者が多いが、彼らが突然志を立てるきっかけもあるし、元々持っているポテンシャルはそんなには昔から落ちていない。その部分を捉えて、彼らが、自分たちが志を立てる。そういう人間でないと、育てたって育ちませんから、企業に入れたって。「ずっと地元でやって行きたい」と就職してきた人間を、「いくらグローバルになれ」と言ったってなる訳が無いので、そういうポテンシャルを持っている人間をいかに集めて育成するかを考えると、「いまあるやつを、どうやって教育するか」ではなくて、やはりサプライサイドの姿や取り巻く環境に目を向けないと、問題は解決しない気がするし、それで解決している会社も結構見るので、そこに一つのソリューションがあると思っている。

小平:ありがとうございます。良いヒントになりました。

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