一般財団法人アーネスト育成財団

地方創生研究会

2022.01.31 地方創生研究会(第4回)

令和4年1月31日、第四回目の地方創生研究会を財団内会議室にて開催した。コロナ感染問題もありZOOMにて開催した。今回は、評議員の前田光幸を講師に招いた。「『丸亀リノベーションまちづくり』&地方創生論」と題して地方創生に関する研究の成果を聞くことができた。
丸亀のリノベーションまちづくりを報告。リノベーションは、老朽建物を補修・改造して従前の機能とは異なる新たな価値・機能を創りあげる。まちづくりは、地域、エリアの生活・しごと・コミュニティーに関わる活力を生み出す。合成して「リノベーションまちづくり」と説明。(注1)
地方創生論では、政府の現在の地方創生策、地方衰退の一模式図、地方創生・再生策の諸類型などの報告があった。

講師の前田光幸評議員

講 師:前田光幸(評議員、エネルギー&イノベーション研究所 代表)

参加者:吉池富士夫(座長、芝浦工業大学理事)Zoom、
平田貞代(芝浦工業大学準教授)Zoom、
小坂哲平(小坂建設代表取締役)Zoom、
石井唯行((株)サンズディー代表取締役)Zoom、
六本木裕治(尾瀬パークホテル企画・営業・広報部長)Zoom、
西河洋一理事長、小平和一朗専務理事、淺野昌宏理事(アフリカ協会副理事長)、
山中隆俊理事((株)メディカルパーフェクト代表取締役社長)

オブザーバ:石井博臣((株)ワンズディー地方事業部、元館山市役所経済観光部長)Zoom

欠席者:韮崎功(元埼玉県秩父農林振興センター管理部担当部長)

丸亀のリノベーションまちづくり

【講演】講師(前田)目的は地域課題解決のために遊休不動産をリノベーションして、従前の活性化策とは全く異なる新たな機能を産み、地域的広がりへと拡充させること。街が単なる流通消費の場ではなく、それプラス、生産・交流・サービスの場にする。
ここでプレーヤーとは、遊休不動産を持っているオーナー、新しい事業を利用して始めようとする人、地域課題を考える人々、大学なども入る。それから当該の市とか町とかの自治体。企画すを担当するプロデューサーが必要。会社、社団法人、NPOなど。

まちづくりの出発点

どう創生が始まるかというと、まず現状を把握する。考古学の反対の考現学で風俗や動態などを把握する。実際にフィールドを歩きながら調査する。今は地域経済分析システム(注2)が自治体毎にあるので活用する。
ビジネスと同じく(1)プロジェクト準備(2)場の形成(3)計画の策定(4)プロジェクト遂行(5)波及・伝搬と進める。
通常民間主体で取り組むが、自治体に地域振興を担当している部局があるので連携して取り組む。イノベーション計画は、プロデューサーが中心となって作成する。

地方衰退一摸式・交通体系の変容

海があって、漁港があり。港がある。漁港の近くには川があって水田があって村がある。街には神社や色々ある。鉄道の駅がある。鉄道を中心とした街である。これが日本の平均的な街である。それが地方成長期にどのように変革したのか。

駅から離れたバイパスに大型店舗

工業地帯ができると同時に車が普及する。バイパスができる。バイパス沿いに家ができ、店もできる。鉄道の便が減っていく。益々車社会になる。漁村の街に人がいなくなる。周りの村に人もいなくなる。これが今の状態である。
バイパス沿いにはモールがあり全国展開のスーパーがある。飲食店があり物販がある。日本のどこにいっても同じ風景である。どこの街を走っているのか道路標識が無ければ分からない。全国展開のお店は、収入を本社に送る。株主に分配する。地方で消費したキャシュが地元に回らなくなる。吸い取られてしまう。
鉄道があった時代には、街の中心は人で溢れていた。街の商店は地場である。キャッシュはその地域で回っていたので、発展の余地があった。

街の中心に人を集める

客観的に見るところの方向を考えなければ駄目である。バイパスができて、安いものが手に入るとなると、そちらに移った。再投資されない。日本は30年間ゼロ成長であった。地方は「吸い取り紙効果」で貧しくなった。
現状では日本が滅びてしまう。鉄道復帰あるいはバス、路面電車を走らせる。街の中心に人を集めないと駄目である。

質疑応答

Zoomで参加する研究会メンバー各位

司会(小平):参加者から質問、意見はありませんか。

意見(石井博臣):地方創生問題は日本全国で悩んでいる。人口減少が問題で館山市は30数年で一万人減少している。地方の行政には人や金が無い。「イノベーション街づくり」に館山市も丸亀と同じように取り組んでいる。イノベーション街づくりで一番の課題は何かを教えて欲しい。

回答(前田):課題は、たくさんある。丸亀は人口約10万人。高校までは地元にいるが、大学は大阪、東京。近くても高松に行ってしまう。出てしまうと帰ってこない。就職先が、市役所とか官公庁、銀行、四国電力などしか働くところしかない。若い人がいなくなっている。それが一番の課題である。
少しずつ変化も起きている。住みやすいから丸亀に来るというIターンが起きてきた。そういう人たちが古い商店街に店を出す。

意見(石井唯行):4年前から館山も街づくりに取り組んできた。人口減少に歯止めがかからない。行政を変えないと、大胆なことはできない。館山市で考えると市長の権限は大きい。特に移住者を中心にコミュニケーションができているので、行政を変える取り組みもしている。今日の話を参考にして、地域を変える取り組みをしたい。移住者との話で、根本的に変えようとの話も出ている。

意見(六本木):尾瀬は一時期、一大観光地であった。これからは今までの観光地とは異なる磨き上げが必要である。人口集中地域の東京、埼玉、千葉、神奈川などの人たちの地域の一部として北関東の山間エリアを考えたい。都会の人との関係性を捉え直す。広域的な生活圏、経済圏における地域の特徴を打ち出した提案をする。

意見(平田)総括的な話が勉強になった。コロナが2年続き、色々な研究がストップせざるを得なくなった。その中で、地方創生の実践的研究に取り組んだ。どこも共通の課題を抱えている。コロナとデジタルの力で、地域創生が進んだ。その延長線上の研究をしているので、後日報告し先生方のご意見を伺いたい。

座長(吉池):伺って感じたのは丸亀市と館山市と共通点がある。共に市役所に対して物申す。あるいは市役所と共に取り組もう。行政は市役所という共通点がある。市が良いのか。丸亀であれば隣の坂出市、館山であれば南房総市とのコラボはできないか。あるいは県を動かしてやった方が早くできるのでは無いか等。館山も丸亀もバイパスがあって、全国で違うところがなくなっている。共通点はある。今日は長時間に渡って議論して頂き大変有意義な会であった。

(注1)清水義次(2014)『リノベーションまちづくり』学芸出版社
(注2)地域経済分析システム(RESAS:Regional Economy & Society Analyzing System)
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