地方創生研究会
2022.10.11 地方創生研究会(第7回)
地方のDXに取組む
令和四年(22年)10月11日、地方創生研究会(第七回)を財団内会議室にて開催した。四名の委員がZoomにて参加した。今回は株式会社エルテス代表取締役社長の菅原貴弘を迎え『エルテスが取り組むメタシティー構想 —デジタル社会にとってなくてはならない存在—』と題し報告を受けた。
エルテスの本社は霞が関ビルにある。本店を21年の5月に岩手県の紫波町に移転し、地方創生に取り組んでいる。
事業内容はデジタルリスク事業とAIセキュリティ事業、DX推進事業である。04年に創業。07年から本業のデジタルリスク、ネットの炎上対応、検索エンジンの評判対策等の事業を始めた。15年に産業革新機構等から出資を受け、16年に東証マザーズに上場した。
講 師:菅原貴弘((株)エルテス代表取締役社長)
参加者:吉池富士夫(座長、芝浦工業大学理事)、
西河洋一理事長、
小平和一朗専務理事、
淺野昌宏理事(アフリカ協会副理事長)、
山中隆俊理事((株)メディカルパーフェクト代表取締役社長)、
平田貞代(芝浦工業大学准教授)Zoom、
石井唯行((株)ワンズディー代表取締役)Zoom、
韮塚功(元埼玉県秩父農林振興センター管理部担当部長)、
前田光幸(エネルギー&イノベーション研究所代表)Zoom、
六本木勇治(尾瀬パークホテル企画・営業・広報部長)Zoom、
小坂哲平(小坂建設代表取締役)
オブザーバー:菅原壮弘(SOKO LIFE TECHNOLOGY株式会社代表取締役)
コアがクラウド上にあるという世界観
講師(菅原)16年から、内部脅威検知サービスをやっている。社内のデータ、営業機密を抜き取る社員を検知するサービスである。最近大手寿司チェーンの社長が逮捕されたことをきっかけに注目された。安全保障や営業秘密を守る側面で非常に売れている。
スマートシティのコアを販売
16年からエストニアと取引を始めた。そこでスマートシティのコアとなるデータ連携基盤UXPを日本に持ってきて販売を始めた。そのきっかけで18年にサイバネティカ社と提携した。18年1月に亡くなった安倍総理とエストニアに日本の代表として帯同した。デジタルリスクと闘い続ける」はスローガンである。地方創生研究会の主旨からずれるが、逆張りというか、成長産業の周辺を狙おうという経営戦略を取っている。
自治体と包括連携協定を結ぶ
岩手県紫波町、矢巾町、釜石市も含めて全国で3市と3自治体と包括連携協定を結んでいる。地方自治体は包括連携協定を結ぶと業務提携になる。協定を結んだ分野に関して随意契約で受注できる。
地方自治体は、全国で千7百ある。我々はその中でも10万人未満の動きが良い自治体をターゲットに包括連携協定を結んでいる。
スーパーアプリ
スーパーアプリというサービスに取り組んでいる。「ワンストップで行政手続き、行政に求められるものは全部できる」を開発。バーチャル市役所、情報の閲覧、行政手続きができる。
また健康増進でお散歩するとポイント貯まる「お散歩アプリ」を作っている。あと健康系の情報が集まっているポータル、事故災害情報をワンストップで提供するサービスである。
移動デジタル相談とマイナンバー
移動デジタル相談は、PCデポと連携してやっている。スマホやPCなどの使い方がわからない高齢の方は多い。移動型店舗を自治体の中で走らせ、ご高齢者の方のスマホ相談を週2回程、マイナンバーカードと紐づけて取り組んでいる。行列ができる位、相談にきて頂いている。
高齢者だと「ライトが点いたけど、消えない」から始まって、初歩的なことが分からない。そういうサポートをしながらマイナンバーの説明もしている。このマイナンバー関連普及事業は国が十割出してくれるので、どこの自治体でもやっている施策である。
地方のイオンとかマックスバリュに店舗を作ってそこでマイナンバー作りませんかという。毎日10人ずつぐらい加入者が増える。全国平均が40%位の時、我々が関わる自体は50%位まで普及させた。
エストニアのデータ連携基盤で地方のデジタル化を推進する
データ連携基盤で有名なのは、我々が担いでいるエストニアのUSPとNECが担いでいるFIWAREがある。この二つがいろんな自治体で競合している。
エストニアでは、行政手続きの99%がデジタル化されている。デジタルガバメント先進国である理由がある。ロシアとウクライナの戦争みたいにロシアに占領されても新しい土地で新しいガバメントを立ち上げることができるのが、エストニア人の発想である。
「クラウド上に持っていって冗長化されてないと、ランサムウェアで攻撃されて動けなくなる」と語る講師の菅原貴弘氏
質疑応答
質問(小平):自治体からどういうお金の取り方をするのか。
回答(講師):自治体と包括連携協定を結ぶと随意契約で仕事が取れる。結んでないと入札になる。一度受注すると周辺の事業も来る。ホームページの更新など、どの自治体もデジタル人材困っているので色々な仕事が取れる。
司会(吉池):地方自治体の行政は前年度の仕事をそのままやるのが得意で、新しいことをやる体質にない。このDXを推進する市長と役所に1人か2人いなければできない。実際に職員のほとんどが、今まで通りが良いという人達の中でやることは大変でないか。
回答(講師):まず自治体のスタンス、市長のスタンスもある。ちゃんと見極めなければいけない。企画課とか企画局は新しいことやる部署なので比較的反応がいい。ただずれると、オペレーションとかルーチンワークしかやったことない人が多いので一気に止まる。
質問(小平):国とアイディアについて事前に根回しとか、人脈づくりに取り組んでいるのか。
回答(講師):人脈を作り色々な形で情報を取っている。ほぼ全ての省庁の人が弊社に顧問でいる。
質問(小平):話の中でデジタル庁は出てこなかった。関係性は。
回答(講師):デジタル庁とは関係が深い。デジタル監とも会った。
質問(平田):大学でも地方創生プロジェクトばやりで、いろいろ話がある。補助金をもらって1回で終わりみたいなものが多い中、難しいと思いきや成功事例が続いている。決定的な違いがあると考え拝聴した。プロジェクトが持続しない問題についてアドバイスいただきたい。
回答(講師):ユーザー目線がないからユーザーが使わないし、補助金も続かないっていう感じだと思う。あとは早めに事例を作る。役所は先行事例をつくり、それ使いまわしをする。
弟と先日、平井卓也デジタル初代デジタル大臣と伊藤穰一氏とパネルディスカッションを紫波町でやった。デジタル庁が食いついてくると全国でその事例を使える。
すると宣伝してくれて色々な自治体から「ヒアリングしたい」と言われ営業ができる。この自治体面白いみたいなポジションに行くと補助金も来る。
質問(六本木):自治体でDXを進めるときにアプリケーションを実際に導入している町のお話を伺った。導入費用はどの位かかるか。
回答(講師):2千万円から5千万円位。デジタル交付金とか使う。