技術経営人財育成と活用に関する研究委員会
2013.02.19 第2回 技術経営人財育成と活用に関する研究委員会
議事録(538KB)
2013年2月19日、第2回目の「技術経営人財育成と活用に関する研究委員会(委員長坂巻資敏)」を財団内会議室にて午後3時30分から開催した。会合には、8名全員の委員と西河洋一理事長が参加した。
委員会では、
(1)財団活動報告、
(2)前回議事録の確認、
(3)「研究員」の就任の案内、
(4)「技術経営人財の育成と活用に関する研究委員会(略称:人財育成研究委員会)」の課題の確認、
(5)技術経営人財に求められる知見
・人財育成研究委員への研究課題、
・技術経営情報の共有、
・経営問題に関する意識レベルと用語の統一
などが提案され、活発な意見交換がされた。
「日本の危機、外国人を育てるのではなく、日本の中で日本人を育てる」などの活動方針が議論された
人財育成研究委員会の今後の進め方を議論
『技術経営人財に求められる知見(討議資料)』をベースに技術経営人財の育成を考える
坂巻委員長:技術経営人財の育成と活用に関して「皆さんと検討して行くが、実際どのように技術経営人財を育てたら良いのか」との課題に対して、小平和一朗専務理事や研究委員の皆さんから、色々な意見を頂いた。具体的には何らかのテキストを作り、それに基づいて、教育・訓練をしながら、人財育成をすることが現実的だ。それで小平がライフワークでMOTを研究してきた今日提出の『技術経営人財に求められる知見(討議資料)』をベースに技術経営人財の育成を考えてはどうか。皆さんの意見を聞きたい。
「経営者としてこれだけは知っておいたほうが良い」を抽出する
小平:本討議資料の『技術経営人財に求められる知見』は、技術経営については色々な見方があるが、経営人財に求められる要素、経営者としてこれだけ知っておいたほうが良いことを抽出している。毎回、少しずつ時間をとって提案し、これに皆さんの経験知に基づく議論をして頂きたい。
皆さんには、いろいろな今までの経験があるので、いろいろな議論ができるが、どこの視点でものを捉えるかが、様々である可能性がある。皆様との間での共通的な認識を持てるようにするため、急遽整理した。最初、8項目であったが、柴田理事より「ICTの活用とビジネスモデル」の追加のアドバイスがあり9項目に整理した。ディスカッションを含めて、委員会の半分時間を使い、私からの情報が1とすると、皆さんの意見を3くらい頂き、整理していきたい。これを教材のたたき台にし、委員各位にも執筆を担当して頂き、当財団の『技術経営人財に求められる知見』を整理したい。
技術経営人財を育てるための教材を作る
坂巻委員長:中身は膨大なので、ここで全部を理解して議論することはできない。小平の提案の趣旨は、技術経営人財を育てるのであれば、何らかの教材がなければならないということ。小平が作成した資料をたたき台にして、本委員会メンバーで、技術経営人財を育てるための教材を作ってはどうかという提案。賛同いただけるのであれば、このテキストを分担し各項目を肉付けして欲しいが、私からの提案。
佐竹:経済産業省が、実施している「知財テキスト」なるものがある。これは項目ごとに冊子になっていて、知的財産の1級、2級を取得するときの参考書になっている。私は賛成だ。小平が作成した討議資料も、各項目を肉付けして、項目ごと1つの冊子にしたら指導しやすい、教本になると思う。
奥出:全体像が分かる項目が最初に必要ではないか。これだと羅列ではないか。この9項目の最初の絵になるものが必要ではないか。
経営学とか、政治学とか、経済学とか、単独の学問だけで経営はできない
小平:この9項目の出し方は、社会人セミナーを企画したときにまとめたもの。世の中にあるMOT講座がどういうのがあるかを研究したことがあるが、この整理は既存にあるそれとはまったく違う。西河理事長も実感しているかもしれないが、今のスペシャリスト先生方の学問領域の区切りでは経営はできない。西河理事長のような経営はできない。色々なことを同時に全て知っていないと経営はできない。いま整理をするのではなく、終わった時に討議をしたい。いま議論をしても既存の学問に引っ張られてしまう。経営学とか、政治学とか、経済学とか、単独の学問で経営はできない。
奥出:私も何となく、それは分かる。
経営学は複合学だ。スポーツや芸術と似ている一面がある
小平:我々が求める経営学は、複合学である。スポーツや芸術のような一面がある。全項目を知ることが必要である。どういう分類が良いのかは、本研究討議が終わった時に決めたい。例えば経済学だけ分かっても経営はできないし、リーダーシップ論だけでも経営はできない。
西河理事長:討議資料「技術経営人財に求められる知見」にある知見プラス、"気持ち"みたいなものが必要。
「守破離」の「守」が学問である
小平:芸術家は勉強してもだめだという話もある。経営者も同じだという考えもある。やたら勉強すると、頭でっかちになって、経営はできないという考えもある。しかし、経営に関する学問はあったほうが良い。芸術大学に入らなくても音楽の演奏はできるが、学んだ学問で効率的に芸術の質を高めることができる。
奥出:「守破離」の「守」が学問である。
小平:一通りやってきた段階で、皆さんの知見やノウハウや実績をまとめて行きたい。
奥出:まずは、実践・実験しながら、その成果を見ながら逐次、総合体系化させるということか。
佐竹:ディスカッションしながら、肉付けをするのか。
小平:テーマ別になっているが、領域が今までの学問に置き換えられないところもある。
奥出:分かりました。既存の学問と違って、そういう位置づけが求められているのですね。実践を踏まえながら、総合体系化しうるかを検討するのですね。その第一段階ですね。
プロデューサーが世界を動かし組織を動かす、学問化(形式知化)をしたい
佐竹:アメリカには、これを「ストラテジック・インテント」という言葉がある。情熱がないといけない。うまくそれを取り入れて欲しい。MOTを学んだのに、モチベーションが低い大手企業の仲間がいる。会社で使えないとかで、自分自身が迷っている人達がいる。マネージャーとか、リーダーもあったが、プロデューサーも必要ではないか。このプロデュースは、小さな組織でも大きな組織でも必要である。技術経営の中で、このプロデューサーを学問にして欲しい。
小平:プロジェクトマネジメントという言葉はあるけれども、経営者の役割として整理すると新しい学問となる。音楽の世界では、100人ぐらいをまとめる指揮者がいるから、そういうジャンルがある。全体のストーリーを組み立てて、会社を運用することの学問化が遅れている。
佐竹:プロデュースしている人が世界を動かしている。組織を動かしていると思う。
柴田:実際に日本では、プロデュースが学問化されていないし、そういうことができる人は少ない。本討議資料の9項目に入れるのか、プラスとしてやるのか。
奥出:総合プロデューサー、黒沢明のようなものがあって、それに俳優がいて、何人観客がいるかということが必要だ。お金を集めて、結局これが、全体戦略という話につながる。プロデュース戦略とか言うものを最初か最後に入れてはどうか。
小平:意見を出してもらいながら、課題にしたい。
「オーケストラの指揮者のように全体のストーリーを組み立てて、
会社を運用することの学問化が遅れている」と語る小平専務理事。
「会社を運営できる人財の育成機関は現状ない」ということから始まった
会社を作るという事象が生まれて欲しい
小平:西河理事長とこの財団を作るときに話しあったのは「経営ができる人財を作る」ということと、「起業が少ない」をテーマとして、「会社を運営できる人財の育成機関は現状ない」という問題を議論したことから始まった。教育が目的ではない。基本は「財団で学び会社を作る」という事象が生まれて欲しい。日本の危機、外国人を育てるのではなく、日本の中で、日本人を育てる
西河理事長:日本の危機である。外国人を育てるのではなく、日本の中で、日本人を育てるのである。
小平:この財団の狙いは、会社を作ってもらいたいということ。必要があれば投資をする。技術経営と言っても研究所の所長の養成ではない。会社経営のできるCEOの養成だ。CTOを育てるのが目的ではない。
山中:会社経営をしたい人を伸ばす教材にしたいということか。
大橋:起業家であり、かつ経営者として、完成になるということですね。そのための技術経営的な手法を持った人達の助けとして、技術経営ができる人が必要だ。
佐竹:70代、80代で勉強する人はいるが少ない。技術経営は、まさに30代から50代前半の人達が対象だ。今は勉強するだけで実践はできない。その人達が起業し、CEOを目指すということで使える。
小平:今は経営者ではなくても、目指している人だったら参加して学んで欲しい。セミナーには、経営者を目指している若い人達が参加している。
山中:経営をやりたいという人に、こういうことを教えるということか。
柴田:現経営の目的に対して、足りている人、足りていない人がいるが、ここがポイントだと思う。
大橋:全くのビギナーではないということですね。
佐竹:新入社員には、経営学は教えられない。ベースがないからだ。
山中:僕ら会社員で、社長になろうと思わなかったら学ぶ意味はない。
小平:新入社員でも、「俺は社長になる」という方には、受講してもらったら良い。
「社長になろうと思わなかったら学ぶ意味はない」と語る山中委員(左)。
活発な意見交換が行われた。右は、佐竹委員
中小企業の二世教育をこの財団でやるのが良い、第2創業しないと生き残れない
坂巻委員長:MOTセミナーで大事なことは、実績を出すことだ。中小企業の二世の教育をこの財団でやるのが良い。一番困っているのは、二世の育成である。オーナー社長としては身内の中からが良い後継者がいなければ、自分の会社の社員から育てたいと思う。しかし、自分の力だけでは、それができない。誰かやってくれないかという切実な悩みがある。こういう人達に教育を受けてもらい、我々もそういう企業の業績を出すお手伝いをし、アーネスト財団が指導すると経営者が育つという実績を出したい。
「大企業に私もいたが、大企業の中で学んだ経営学を使うことは非常に難しい」と語る委員の柴田理事
柴田:こういうことを実施しないと、この日本をどうにかすることはできない。大企業に私もいたが、大企業の中で学んだ経営学を使うことは非常に難しい。経営者は学びに来ない。次期を狙う取締役、事業部長クラス、部長クラスが来るだろうが、今から頑張る中小企業を立ち上げるとか、新しい事業をこれからやろうという人達を支援することが必要だ。
坂巻:そういう方たちを対象にしたテキストを小平が作成した。この資料をベースに、皆さんの得意分野を合わせて、ブラシアップをしていくが今回の相談事項である。
奥出:ここからスタートするということか。先ほどの二世の方の話は、素敵な提案だと思う。ただ二世だと同じ業界で、"ソバ屋はソバ屋"になってしまう。博士課程や修士課程に進んでいる方で、世の中には、独立したいとか、起業したいという方はいないのか。
大企業に浸かっちゃうともうだめだ
大企業の者がMOTを学んでもMOTを活用しない、学ぶことが目的になっている
西河理事長:大企業出身の者がMOTを学んで、MOTを活用できないという話があったが、これは、企業がお金を出してくれて、自分のお金で学んでいないため、勉学として学んだらそれで終わりとなる。私は経営者として参加している。学んだこと学んだことすべてを試したくなる。そしてすべての結果がでる。この環境の違いは非常に大きい。先ほど話のあった二世であれば、環境的に自分がやらなくてはいけないだろう。
柴田:実際に大学で学びながら、実際起業しようとする人はいるのか。
西河理事長:います。
奥出:います。そういう方にこちらの土俵にのってもらう。ドクターと違ったスペシャリストもある。一級建築士を取るとか。実践的な方も起業家として、こちらに候補としてご案内してはどうか。二世の場合、親父の職業を継ぐのがメインになってしまうので、新たなる発想が少ないかもしれない。
坂巻委員長:龍角散みたいな業界は別にして、今の二世の最大の悩みは、おやじがやった商品ではもう会社はやっていけない。新しい商品と新しいマーケットを創らなければいけない。これが二世の一番の悩み。
自分には組織力がないと言う、組織は一人から始めれば良い
佐竹:我々がそれを指導、支援するのが、一つのファクター。大手企業の知人でかわいそうだと思う一例だが、ソニーは50歳までに役員になれないと、部長であっても50歳でいきなりヒラになってしまう。この前まで、MOTを熱く語っていた仲間が、この瞬間にモチベーションがダウンする。こういう人達の尻を叩いて、再生(起業)させたいという気持ちがある。
西河理事長:大企業に浸かっちゃうともうだめだ。例えば、もともと私はゼネコンだった。ゼネコンはバブル崩壊後すべて赤字体質になって、借金が多くて苦しんでいる企業と競争しても、ゼロからスタートすれば勝てると思った。大企業にいて苦しんでいる人達に「独立してなぜやらないのか」と聞いた。「自分には組織力がない」と言い訳を言う。組織は一人から始めれば良いと考えている。
今の日本のMOT教育の一番の問題は、実践評価ができていないことだ
組織が大きかろうが、小さかろうが同じだと思う。落ちこぼれは、落ちこぼれだ
西河理事長:我々は、パワフルな人達を探し出して、その人達に教えたい。
奥出:そういう人はいるかもしれないが少ない。
小平:組織が大きかろうが、小さかろうが同じだと思う。落ちこぼれは、落ちこぼれだ。自分の考え方を変えないと、どこへ行っても同じ結果になる。大手だからダメな訳ではない。努力をしていない。
大橋:寄らば大樹ではなく、組織を変革する仕事が大企業の中の人達にも使命としてある。それを破壊するやり方が分からないからそのままになる。松下でも不況になればユニット単位でリストラの対象になる。大企業の中での勉強はしているが、学んでないから大企業をスピンアウトして、起業することができない。企業を変えていかねばならないという経営者は沢山いる。二世を育成するのは良いと思う。基本的には第2創業しないと、親から引き継いだままでは、企業は生き残れない。30年たてば陳腐化している。
「寄らば大樹ではなく、組織を変革する仕事が大企業の中の人達にも使命としてある」と語る大橋委員(中)。
左は、西河理事長、右は奥出委員。
坂巻委員長:MOTはいろんなところでやっていて、今の日本のMOT教育の一番の問題は、実践評価がないことが問題だと思う。教育というのは教えるだけではなく、やらせてみて、その人のスキルを評価しないと、教育をしたことにならないと思っている。我々の「アーネスト育成財団」の人財育成は、講義もするが、二世さんの現場へ行って、当財団の講義で学んだことを、事業にどう取り込んで、どういう成果を出したかという現場診断をすべきだ。
淺野:私もまさにそれをやりたいし、やるべきだと思う。そういうことをやった例がないというか、出来上がったものが無いわけだから、たたき台のこの討議資料をもとに、フリーに議論していって、それで出てきたものをまとめつつ、進めていくというのが形になるのではないか。
坂巻委員長:小平が言ったことがたたき台のイメージとして、最初から委員の間で合致できないから、委員会をやりながら、生徒の実績を見ながら作り上げればいいと思う。
小平:芸術と似ているところがあって、ある程度の基礎知識を積み重ねて、芸術ではプレイして聴衆に受けないとどうにもならない。しかし知識面は、教材がないとスタートできない。
淺野:これを議論していくと、そういうことがいろいろと出てくるのではないか。
「これを議論していくと、そういうことがいろいろと出てくるのではないか」と語る淺野委員(右)。
左は、奥出委員。
ここで勉強した人が先生になることに期待したい
形式知に整理されていないと、実践をした時に形式知に対する批判ができない
小平:ある程度、知見や形式知がないと、実践をした時に形式知に対する批判ができない。
奥出:武道も同じで、守・破・離の破の半分ぐらいのもの。破と離を現場でやる。それをまたフィードバックする。このサイクルが必要である。
小平:それを早いスピードで実践することが、今はやられていない。MOT教育が形式知としては、現実の経営の世界から離れていっている。学問的に出来上がっているものは立派であるが、その知見がなかなか現実化しない。委員の皆さんも早くこのサイクルを回して欲しい。
奥出:中小企業が集まってやっている組合がある。財団が下準備できたら、そのような組織とも、キャッチボールできたら良いと思う。
佐竹:中小企業が集まって勉強会をしているところはかなりある。ただ、先ほどの西河理事長のお話もあったが、活用できる内容でディスカッションしないと意味はない。松下政経塾は、経営者と政治家を同時に育てることが目的だったと思うが、我々も継続的な発展と成長をするためには、起業家や二世を育成すると同時に、常に現役の経営者を参加させると当時に、この中でも育成していかなくてはいけない。継続的に若い人を育てることを行って欲しい。
西河理事長:ここで勉強した人が先生になることに期待したい。当財団の今後の活動に期待したい。
「我々も継続的な発展と成長をするためには、起業家や二世を育成すると同時に、
常に現役の経営者を参加させると当時に、この中でも育成していかなくてはいけない」と語る佐竹委員(中)。
左は山中委員。右は、理事の柴田委員。
今後の対応、各研究委員の分担
「技術経営人財の育成と活用に関する研究会」の研究課題の担当項目を決めて、それぞれの項目で、30分説明、30分ディスカッションと言うやり方で進め、報告内容を強化することとなった。
次回からの「技術経営人財に求められる知見」討議資料のテーマと担当
2月: | 第1章 | 技術経営論(小平)<今回> |
3月: | 第2章 | エンジニアリングはMOT(小平)、 イノベーション企業の創生と企業間連携(佐竹) |
4月: | 第3章 | マーケティング:市場とコミュニケーション(小平)、 マーケティングの基礎(大橋)、 グローバルビジネスにおける日本企業の強みづくり(柴田) |
5月: | 第5章 | 情報通信技術(ICT)の活用とビジネスモデル(小平)、 新規ビジネス(社内起業)モデルの紹介(山中) |
6月: | 第4章 | 技術経営戦略論(小平)、 M&A戦略(坂巻)、 アフリカ、中東などのビジネスと歴史と文化(淺野) |
7月: | 第6章 | 技術リーダーの育成(小平)、 技術経営戦略と戦略MM教育(奥出) |
8月: | 第7章 | プロジェクトマネジメント:生産管理、開発管理(小平)、 研究開発部門の事業化戦略(坂巻) |
9月: | 第8章 | 管理会計:財務会計,企業会計,ファイナンス(小平)、 会社経営における人、モノ、金(淺野) |
10月: | 第9章 | 法務:総務、オープンイノベーション、特許(小平)、 会社法務(大橋)、 特許(坂巻)、 オープンイノベーション(山中) |
11月: | 第10章 | 技術経営の実践事例(西河)、 まとめ:分類の再考(全員) |