技術経営人財育成と活用に関する研究委員会
2013.06.08 第6回 技術経営人財育成と活用に関する研究委員会
議事録(414KB)
2013年6月18日、第6回目の「技術経営人財育成と活用に関する研究委員会(委員長坂巻資敏)」を財団内会議室にて午後3時30分から開催した。
委員会では、(1)財団活動報告、(2)前回議事録の確認、(3)教材に関する講演と意見交換などが行われた。
講演では、技術経営戦略に関連して、小平、坂巻、淺野の3名から教材に関する講演があり、活発な意見交換がされた。
(1)第4章『技術経営戦略入門』(担当 小平和一朗)
(2)第4章『M&A戦略』(担当 坂巻資敏)
(3)第4章『途上国市場の攻略に就いて』(担当 淺野昌宏)
(1)第4章『技術経営戦略入門』(担当 小平和一朗)
目標(目的)を実現するために戦略がある
目標と現実があって、問題とは、目標とのギャップの中にある。その問題を解決するために、戦略を立案する。目標が無いと問題も起こらない。目標の設定は、理想、夢、あるべき姿である。
問題の設定は、「あるべき姿」と「現状」との違いを明確にすることにある。
情報の吟味は、「発生事実」と「比較事実」の2面から吟味する
情報の収集にあたっては、What(何が)、Where(どこで)、When(いつ)、How Much(どのていど)、Why(なぜ)が情報収集の視点である。What(何が)は、対象と問題の現象を明らかにする。Where(どこで)は、問題が発生している地域、場所、問題の現象がどこで発生しているかを限定しなさい。When(いつ)で具体的に特定できる時にかんする情報を整理し、How Much(どのていど)で具体的な数値で問題を捕らえる。Why(なぜ)で、疑問をもって『なぜ』『なぜ』を数回繰り返すことで原因を把握する。
「戦略論を語れても、戦術はハウツウ論であるので、現場を知らなくては語れない」と
戦術は経験がないと考えられないと実践的論を小平は語る。
(2)第4章『M&A戦略』(担当 坂巻資敏)
日本の経営者の考えは日本語でなければ正しく表現できない
坂巻資敏委員長は『M&A』と題する講演に中で、「海外の企業幹部への教育は、下手な英語でやるよりは、日本語で行い通訳させた方が良いと私は思う。人がものを考えるのは、言葉を使って考えているから、日本の経営者の考えは日本語でなければ正しく表現できない。これを正確に翻訳することは困難であるから、優れた日本人のリーダに学びたいと思う海外の人は、日本語を学ぶことになる。これが真のグローバリゼーションだと私は考えてこれまで企業活動を実践してきた」という。
人生観と世界観、人間としての品格、品性が一番重要
経営とは究極は経営者のものの見方考え方であり、グローバル経営というと英語を話さなければという風潮があるが、経営はその人の人生観と世界観、人々への接客態度等、人間としての品格、品性が一番重要と思う。
これを社長自らが日々精進して手本を社員に見せ、新たに加わった人々を導けばM&Aは成功する。
「海外の企業幹部への教育は、下手な英語でやるよりは、日本語で行い通訳させた方が良い」
リコーの海外市場相手にビジネスに取り組んできた坂巻は言う。
(3)第4章『途上国市場の攻略に就いて』(担当 淺野昌宏)
カントリーリスクに対応
ビジネスにリスクは付き物である。海外の場合、いわゆるカントリーリスクと言われるものから、文化の違い、商習慣の違い、生活習慣の違いなどから日本人には予想し難いトラブルに見舞われる。マネージメントの仕事は、それらを予見して手を打っておくが、予見出来ない事の方が多い。
守護神となってくれる人を決めて平素から大切に扱う
そのためには、その地での守護神となってくれる人を決めて、平素から大切に扱い、何か事ある時には、直ぐに動いてもらえる関係を構築しておく必要がある。時として、リスクに繋がるものに「文明による価値観の違い」がある。
「明日必ず会います」と言うと神の意志より自分の意思を優先させることになり不敬罪となる
一つの例として、イスラム教徒の時間の観念と因果関係の観念は、日本文明や西欧文明とは根本的に違う。過去・現在・未来が因果関係によって繋がっておらず、一瞬一瞬が神の創造にかかっている。今の一瞬と、次の一瞬は繋がっていない。過去の出来事で今が縛られる訳ではなく、未来は神の領域に属する。だから、未来に就いて話す時は、必ずインシャラーという。「明日朝8時に!」と言うと、「インシャラー」と返事が返ってくる。最初は、「ふざけるな!」と思うが、解説すると、約束は守るつもりだけど、神様が望まなければ守れないかもしれない。だから、インシャラーなしに「明日必ず会います」と言ったら、神の意志よりも、自分の意思を優先させることになり、重大な不敬罪となる。
「筋を通す事は、『一貫している』とか『変わらない』ことではなくて、その時々の状況に忠実である事なのだ。
文明が違えば価値観も違う事は、リスク回避のために認識しておく必要がある」と淺野はいう。