連載:中東 アラブのお話し
(2015.5.15)
(第4回) 砂漠のドライビングテクニック
理事 淺野 昌宏
砂漠の旅は海を航行するのと同じです。目的地のオアシスや集落は海に浮かぶ島の様なものです。最近では舗装道路があるところもありますが極一部であり、360度、見渡す限り砂の地平線の中を走ります。砂漠が海でランドクルーザーが船です。
装備・水よりガソリンが大切
先ず装備として必要なことは、ポリタンクに入ったガソリンやジーゼルオイルをたっぷり積むことです。砂漠の真ん中にガソリンスタンドはありません。道に迷っても大丈夫なだけの十分な燃料を持つことです。さまよう事になった場合、水が切れても身体はしばらく持ちますが、ガソリンがないと動けません。水よりガソリンが大切です。更に、エアーフィルターも数個の予備を持っていることが必要です。砂でかなり頻繁に目詰まりします。車が動けなくなったら捜索を待つしかありませんので、故障させないことが一番大切です。勿論、安全を考えるなら、複数での移動をお勧めします。
地図も磁石も役に立たない
砂漠に入ると地図は役に立ちません。地図そのものがありません。風で砂丘の形は常に変化しています。昼は太陽を見て、夜は星を見て、ランドクルーザーの走行距離で現在地を認識します。もちろん、土地の人は、かすかな地平線の違いや、稀にある岩場などを知っていて目印にしています。ただし、2000年以降は、GPSが普及し、位置情報を容易に知ることが出来るようになりました。
ドライビングテクニック
砂の中を走る時はタイアの空気圧を減じて接地面積を増やしグリップを良くします。通常は空気を二割ほど抜きますが、砂の中でスタックした場合などは更に抜きます。砂漠の中では巨大な砂丘を登ることもあります。必ず直角に登攀することが必要です。斜めに上ってはいけません。スタックした場合に、バックにギアを入れて重力を利かせて後戻りすることで脱出します。また、丘を登り切った天辺では注意を要します。雪庇の様な形になっていて、空中にダイビングする可能性があるからです。
砂嵐にも注意を
砂嵐に遭遇する事があります。砂漠の中でも、サラサラの砂ばかりではなく固い地面の所もあり、100Kmで走れます。しかし、砂嵐の時にこんなスピードで走ると、フロントガラスは、瞬く間に磨りガラスになって前が見えなくなります。
サハラ砂漠やアラビア砂漠、スカイブルーの空と、360度見渡す限り地平線の中でのドライブは爽快です。やってみませんか。