連載:Africa

(2013.6.15)

(第1回) 砂漠の風景

-辛いプロセスがあってオアシス-

研究員 淺野 昌宏

天空一面に、金の粉を振り撒いた「輝く空」。こんな凄い「天の川」は見たことが無い。1978年8月、場所はリビア砂漠のど真ん中、北緯26.335度・東経17.228度のジガン近傍です。夜の8時になっても、目的地(無線中継所建設現場)に到着できず遭難しかけた時、車外に出て見上げた空でした。後ろに戻っても400km、前方のオアシスまで300km、東に行っても西に行っても何百キロも文明の灯りが無い、そんな砂漠のど真ん中で、あるのは寂寥感と今にも落ちてきそうな天の川だけ。最高の醍醐味でした!

ジガンの対流圏散乱波通信システムのアンテナ

ジガンの対流圏散乱波通信システム(注)のアンテナ。
左から2番目が、当時の筆者。

その日は1時間ほどさまよった末、何とか建設現場にたどり着き、翌日は打合わせを済ませ、再び50℃近い砂の海を旅します。オレンジ色の粉砂漠、真っ赤な色の砂砂漠、鉄分の多い黒い岩石砂漠、白い石の礫砂漠、そんな中をランドクルーザーで進み、夕暮れにたどり着いた「泉と椰子のある集落」、ホットします、心が和みます、「オアシス」はいいねとロマンチックな気分でした。
別の日に、飛行機でその町クフラに飛びました。そこにあったのは白っぽい緑の椰子と埃っぽい泉だけの薄汚れた町でした。オアシスとは、そこにたどり着くまでの、辛い・長いプロセスがあって初めてオアシスなのだと気がつきました。オアシスとは空間に存在するのではなく、心の中に現れるものだったのです。

LM70R(マイクロウェーブ通信システム)の中継局の一つ

LM70R(マイクロウェーブ通信システム)の中継局の一つ

(注)対流圏散乱波通信システム

「対流圏散乱波通信システム」とは、対流圏の大気の乱れにより散乱する電波を利用する通信方法。今日のように衛星通信が大容量の伝送が出来なかった90年代頃迄は米軍や、離島間の通信に使われていた。

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