連載:Africa

(2013.9.15)

(第2回) ハイウェーでカーチェイス

-アフリカのケニアで出会った強盗団-

研究員 淺野 昌宏

1996年8月7日夜、ナイロビ空港に経団連ミッション豊田章一郎会長一行を見送り、その帰途23:10ハイウエーを走行中にその事件は起きました。
ケニア北部の難民キャンプを視察する目的のミッションで、全日程を終えナイロビ空港迄は警察の護衛付で送り、無事に飛行機に乗せた後の出来ごとでした。

1990年代のナイロビの街

1990年代のナイロビの街。

突然車の前にカットイン

空港から5-6分走った所で、急に緑色のBMW520が私の乗る支店長車の前にカットインして来ました。
こちらが避けて車線を変更して並んだ瞬間にピストルを握った手で停止せよと合図をおくって来ました。

猛スピードで逃げた

咄嗟の判断で「Go!・・」と叫び、運転手も同時にアクセルを踏込み猛烈にダッシュ。瞬時にして、100m程引き離しましたが、流石にBMWは直に追い付いて来ます。こちらはベンツの320、時速140-150kmで、ハイウエーでのカーチェースが始まりました。
街まで7km、幾つものロータリーをタイヤを軋ませ、突っ切ります。何時、弾が飛んで来るか判らぬ状況で姿勢を低くし、逃げ込み先を必死に考えます。
アフリカとはいえ表玄関の空港への道は街路灯も明るく、立派なハイウエーです。そんな中、運転手も必死、こちらも必死。すれ違う車を避けながら、逃げ込み先を探している内に遂に街中に飛び込みました。賊は未だ追いかけて来ます。

警察署に飛び込む

閃きました。「警察だ!」と叫んで1km走って中央警察署構内に飛び込みました。息を詰めて窓から覗くと、賊はその前を、何も無かった様に通り過ぎて行きました。賊の気持を察するに、さぞかし無念だったでしょう。幸いに発砲される事は無く、車も無傷でした。警察の話ではBMWは強盗に入った家から盗んだもので、手配の連絡が出されたばかりのものでした。賊は逃走途中で警察の目をごまかす為に、乗り換えの車として私のベンツに目を付けたものと思われました。それ以上の事情聴取は無く、興奮した気分のまま家に帰りました。

ドライビングテクニックの講習

この事件で難を逃れる事が出来たのは、その9ヶ月前に運転手に受けさせたドライビングテクニックの講習の成果でした。講習を受けさせるに至る顛末は次号でお話しします。

ページのトップへ戻る