一般財団法人アーネスト育成財団

調査研究報告 連載:中東 アラブのお話し

(2014.10.15)

(第2回) ナツメヤシ、羊、ラクダの三つがあれば暮らせる

理事 淺野 昌宏

中東諸国には、ペルシャ人の国、トルコ人の国もありますが、多くはアラブ人の国です。アラブ人とは何かご存じですか?アラブのお話を致しましょう。

アラビア語を話す人達がアラブ人

アラブ人とは、アラビア語を母語とし、アラブ文化を受容している人達の事です。アラブと言う民族はありません。
日本では中東に住みイスラム教を信仰する民族として捉えられていますが、全てのアラブ人がイスラム教徒と言う訳でもなく、イスラム教徒がアラブ人と言う訳でもありません。現在このアラブ人は約3億人と言われています。

5つのアラブ

一つはエジプトを中心とした「エジプトアラブ」。古代からエジプトの地で生活して来たエジプト人です。
二つ目はレバノン・シリアの「フェニキアアラブ」。旧約聖書にもフェニキアの夜として出てくる古代フェニキアの子孫で白人です。
三つめはチグリス・ユーフラテスの「メソポタミアアラブ」。古来いろんな民族の攻防があって現在は主にイラクにいる人達です。
四つ目はアラビア半島に住む「ベドウインアラブ」。「アラビアのローレンス」に出てくる、白いシーツを纏った「おばけのQ太郎」の様な格好をした人達です。
五つ目は北アフリカに住む「田舎アラブ」。リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ等に住んでいる人達でベルベル族なども含みます。

アラビア半島のベドウイン

四番目のベドウインアラブはアラビア半島をテリトリーとした、遊牧の民、砂漠の民としてのイメージの強い人達ですが、穀倉地帯では農耕民であり、海に面した所では海洋民としてインド洋を股にかけました。
その中で砂漠の民の発祥の地は、アラビア半島南部・イエメンのハダラムートと言われており、彼等はナツメヤシ、羊、ラクダの三つがあれば暮らしてゆけます。ナツメヤシの「幹」は家の建材として、「葉」は屋根材として、「繊維状の皮」は衣服として、「実」は干し柿の様に甘くビタミン・ミネラルが豊富な食物となります。
羊は「乳」からチーズを作り「肉」をご馳走にし、「皮」は水袋や衣服、履物に利用します。ラクダは乗用車であり、荷物運搬のトラックであり、用済みになれば肉も食べ、皮も使います。一切無駄の無い生活をしていました。しかし現在は、オイルマネーを運用し、都市化をはかり、王政の継続に努めています。

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