連載:中東 アラブのお話し
(2015.1.15)
(第3回) イスラムの戒律とお酒
理事 淺野 昌宏
イスラム教典コーランで飲酒を禁じていることは、皆さんご承知の通りですが、厳しさの度合いは国によって異なります。
厳格に守っている国は、サウジアラビア、リビア、クウエート、イエメン、イランなどで、外国人には許している国はUAE、カタール、バハレーン、オマーン、パキスタン、マレーシアなどがあり、その他の国では行政上は禁止されておらず自由です。
我慢できない人は自分で造る
私は、リビアのトリポリに四年住んでいましたが、自分で造っていました。
「砂糖水」にパンを作る時のイースト菌を入れれば二、三週間でアルコールが出来るのですが、それでは味気ないので、葡萄ジュースを大量に買ってきてポリバケツでワインを造り、三か月は寝かせておきました。
自分で蒸留器を作り、ブドウ焼酎も作りました。日本からの出張者には、自宅に招き飲んでもらうのですが、大変喜ばれました。
鞭打ちの刑が待っている
もちろん、こっそりとやります。見つかると牢獄行きです。飲酒で捕まった人もいましたが、日本人の場合は、詫びを入れて貰い下げに行くと釈放してもらえました。しかし、現地のイスラム教であれば、鞭打ちの刑が待っています。
砂漠に生きる人々の百科事典
何で、コーランでは飲酒を禁じているのでしょうか。
コーランと言うのは、仏教の経典とは違って、砂漠に生きる為の「百科事典」の様なものです。乾燥した、暑い所では酒は健康に良くないのです。同じ様に、豚肉も禁じられています。
冷蔵庫の無かった時代、豚肉は不衛生だったという事のようです。
ついでながら、奥さんは四人まで持つ事ができると書いてあります。イスラム教が成立した七世紀のアラビア半島では、部族間の戦闘が絶えず未亡人も多く、救済策としての必然性があった様です。
しかし、四人まで娶って良いといっても、アラーの神は、全ての夫人に平等に愛を与える事を求めています。あらゆる喜びを平等に与えることなど難しい話です。財力と体力がないと出来ません。
アラーも洒落た神ですね。