グローバル研究会(世界経済の動向調査)
2014.4.15 クローバル研究会 (第1回)
財団事業計画の事業概要であげている「世界経済の動向調査」の具体化する取り組みとして「グローバル研究会」を企画した。財団の事業計画では「世界経済の動向調査」としたが、ビジネスのグローバル化への対応を考えると必ずしも経済だけではなく、文化、宗教、マナーなどがあり、幅広く取り組む必要を認識し、「グローバル研究会」として取り組むこととした。
「ビジネスモデル創生において直面する『4つの力』ほか」(前田光幸)、「技術経営人財に求められる総合的な視野と思考力」(大橋克已)、「ビジネスの為の総合的視野」(淺野昌宏)、「国際社会のリーダーとしての課題」(小平 和一朗)の講演があり、意見交換をした。
ビジネスモデルジェネレーション
ビジネスモデルを作る場合に外界からの力がある。世界のでは色々なことが起こるので、それをどのような視点で見るのか。あるいは座標を定めないと、物事を捉えることはできないという観点で2つの観点を報告したい。
まず、マクロ、競争、市場、未来という4つの力と、真ん中にあるのは、オスターワルダー(Osterwalder)他のビジネスモデル・ジェネレーションと言っている学者である。9つの要素がある。
もう一つの観点は、野中先生の「ビジネスモデル・イノベーション」から引用した「事業創生モデルの4層構造(図2)」。最初に企業ビジョンがあり、そこでビジョンに立脚して「知識創造基盤」があり、その中に3つの大事なことがあって、一つは価値命題、SECIモデルという暗黙知を共有する場、知を実践するリーダーの3つがナレッジ創造基盤として重要である。その基盤の左右に、組織基盤と顧客基盤がある。それらの基盤の上で製品とか、サービスとか、コトを作っていく。製品やサービスが出来上がるが、最終的にはコスト構造、市場価値があり、適正利潤を得て、社会に役立っていく。
マクロ、競争、市場、未来という「4つの力」を報告した前田座長。
図2 事業創生モデルの4層構造
シエール革命
2006年のシエール革命は、Disruptiveに分類したい。"change on one demension" で起きている。資源浪費、自動車の大型化、スマートグリッドなどオバマがグリーンニューディールと言ってアメリカの雇用を増やすといったが消えてしまった。世の中のトレンドを巻き戻す現象として捉えている。
大橋:元のモデルと異なる現象として捉えないといけないと指摘してくれた。
業法でやっている事業、技術は進歩してもビジネスモデルが進歩しない
前田:モノを作っている産業には、業法が無いが、エネルギーの分野には業法がある。使い切ってしまう業態では、1にも、2にも安定供給が重要である。市場機能に預けてはならない。国が担保する必要が出てくるので業法がある。電気もガスも石油も。石油は20年前に無くなった。安定供給の責任を負わせる。一定のマージンを保証する。同じようなことが、金融にも、保険にも、運輸にもある。通信にもある。通信、今はなくなった。農業にもある。運輸も大分無くなった。
そういう業法でやっているところは、技術は進歩してもビジネスモデルは進歩しない。競争も起こらない。世界にでることはできない。米国にも欧州でもあったが、外している。日本その点で遅れている。
そういう業態、優秀な人財を集めて技術は高まるが、競争の仕方を知らないので世界に出られない。エネルギーなどの大きな変化が起きた時に対応ができない。
西河:メタンハイドレートが進んだ場合どうなるか。
前田:メタンハイドレートは昔から言われているが、あれは出てこないと信用しない。閉じ込められているメタンを大気中に拡散させないでいかに取り出すかが課題である。メタンは20倍の温暖化効果がある。環境破壊につながる。
放送大学で本多俊和の「グローバリゼーションの人類学」という人類学の科目を受講した。世界規模で色々な問題が起きている。世界では常に争いと和解が起きている。それを人類学の立場でみてどのように研究すれば良いかを勉強した。
曼荼羅で世界が一つと見ると色々な現象が起きている。地球上の課題として争いをどう解決するかがある。「地球家族と多様性の存在」で地球上のところで、塊としてぶつかりあったり、融合したり、反発したりで、これが課題として現れてくる。宗教紛争とか、国境紛争とか、資源エネルギー争いとか、食料問題とか、国際通貨とかは、これは個別的なというより、共通的な地球上にある課題だと思う。
陰と陽のところは、世界の中で争いがあった時の和解の場は国際連合である。国連は日頃気にしなかったが、色々なことが行われている。
国連憲章1条にある国連の目的は、次の三つである。
(1)国際平和・安全の維持
(2)諸国間の友好関係の発展
(3)経済的・社会的・文化的・人道的な国際問題の解決のため、および人権・基本的自由の助長のための国際協力
ビジネスをする人たちは争うことではなく受け入れられる形で
縁起という次の現象が起きている。曼荼羅の中の「平和と安全」「経済開発」「社會開発」「人権」「環境」「国際法」「人道問題」「保険」、ここらあたりの問題を取り上げ、どう解決してきたかを学ぶことは重要であると考えている。ビジネスをする人たちは、争うことではなくて、交流し、交易することで、お互いが受け入れられる形の中でしかビジネスは出来上がらないと考えている。実際あったことの事柄の中から知恵としているか、運営しているか。争いを求めるのではなく、いかに治めてきた知恵を研究するのは重要だと考える。国連の活動の視点も重要である。
「争いを求めるのではなく、いかに治めてきた知恵を研究するのは重要だと考える」と話す大橋克已研究員。
リー・クアンユー、日本の人口問題を解決しない限り、日本の未来は暗い
リー・クアンユーは「日本の社会は人口問題が解決できなくて、もうすでに凡庸な国になりつつある」「自分が日本の若者であったら、外国に移民することを選ぶ」「日本には未来が見えないからだ」という。
私の息子は「"Japan as No.1"ではなく、"Japanese as No.1"を目指そう」と言っている。若者はリー・クアンユーならずとも、日本の現状を理解していると感じた。
「日本の人口問題を解決しない限り、日本の未来は暗い」と、「2060年には。1.3人で日本高齢者1人を扶養すると予測されていて、その重圧に耐え切れずに日本を離れる」とリー・クアンユーは言っている。日本は移民を排除して、解決策に入れていない。10年、15年放置すると手遅れになる。日本の政治家にこの問題を問いた時「産休を伸ばす」「子供手当増やす」という答えだった。この答えに失望したという。大震災で日本民族は立派にやったので、解決してくれるものと期待したが駄目である。
大橋:古くは外国から日本に沢山入ってきた。ボートピープルのイメージが強い。日本は良い国だということで、移民というより、流民という形で日本に沢山入ってきた。
小平:中国は一人っ子政策の影響を受けて経済的にも問題が起きている。日本も意図的ではないが一人っ子政策になっている。
前田:55歳定年の時、65歳が平均寿命であった。85歳の寿命となった現状ではもっと働くべきだと思う。70歳定年という考えもあるのではないか。女性の活用と、年寄りの活用がある。人口減っても構わないと考えているが、移民も構わないと考える。
淺野:移民を受け入れると、文化が変わってくる。生活のパターンも変わってくる。
「移民を受け入れると、文化が変わってくる。生活のパターンも変わってくる」と
報告する淺野昌宏研究員(中央)。左が西河洋一理事長、右が大橋克已研究員。
【質疑】
世界エネルギー長期見通しのファクターは人口である
前田:世界のエネルギー機関や国連や世銀など色々なところが、世界のエネルギーの長期見通しを出してくる際のファクターは人口である。人口は永遠に伸びることは出来ない。食糧と水とエネルギーに問題がある。
フランスの人口学者でエマニエル・トッドという学者がいる。彼は人口に対して楽観論である。女性の識字率と出生率は相関するという。人口は、教育によってコントロールできるという。教育レベルを読み書きできるレベルにすることで抑制できると考えている。
淺野:中国が2015年にピークを迎え、インドが2030年にピークを迎えるといわれているが、アフリカ大陸だけは2100年までは伸び続けるといわれている。
ユーロと経済問題
前田:もともとユーロが幻想である。財政も個別、貿易も個別、国の競争力も異なる、国家財政収支も個別、ユーロだけを共通としているだけである。従ってギリシャ問題が起きた。
小平:どの国が主導権を持ったのか。
前田:フランスとドイツである。ユーロの中で競争が起きた。
淺野:従って、小さな会社は潰れてしまって、大きなところ、強いところが残った。
前田:なぜユーロが問題になってきたかの原因はサブプライムローン問題である。あれでヨーロッパの銀行は余裕が無くなった。アメリカのババを引いてしまった。
小平:経済はEU問題を勉強することで分かるのか。
大橋:課題が類似しているものもある。日本では失業問題、雇用の形、移民、TPPも出てくる。
小平:日本の少子化、人口減少の中で日本がどうなるという予測をつける上での情報が欲しい。
大橋:時間軸で変わってくる。
小平:商売をする上では近未来だ。
大橋:布石を打つことも重要だ。短期ではならない。
小平:5年とか10年である。
海外に工場を出しても日本人の雇用につながらない
前田:GDPが減っても良いと思う。GNPで良いと思う。海外にでるのは製造業とすると。サービス化が進む。
小平:ただ、日本国民の就業ができなければ所得の道がなくなる。
淺野:午前中はHISの澤田会長と話をしていた。アフリカでケニア、南ア、チュニジアとモロッコの4拠点持っている。澤田会長自身が8年前にケニアに行って、優秀な青年を連れてきて日本で4年間研修をして、現在アフリカのケニアの支店長をさせている。それでもっと成功しているのはトルコだという。HISとアフリカ開発銀行と協会と一緒にやりたいとお願いにいったら、エチオピアに直行便が飛ぶからといったら支店をつくるという。現地は現地の人を教育して育成する。グローバル化にあたっては、GNPという考えで対応しないといけないと考える。
大橋:小平は「国内産業として、日本人を雇用する産業をどうするのか」と疑問を持っている。
西河:(GDPを無視しても良いが)日本の人間にお金がわたるのかという疑問がある。
小平:日本国民がまず豊かにするためには、経営人財の育成があると考えている。日本の国民が豊かになる仕掛けを学びたいと考えている。
大橋:基本的には、海外に工場を出しても日本人の雇用にはつながらない。持っているノウハウを海外向けにアプライするために出掛けていくがある。
今、我々は正しく歴史認識をすることが出来ているか
従軍慰安婦問題、この問題について韓国に行ってきちんと説明できるだけの知識を持っているかという疑問である。尖閣問題、千島問題、竹島問題は韓国に占拠されているというのかである。
靖国神社問題では、宗教観と憲法の問題とでどう認識するか。
前田:ビジネスで外国人とこういう話はしない。タブーである。だからといって自分の考えを持たなくて良いかというと違うと思う。
小平:指摘の通りだと思う。確かに、ビジネス会話のなかで、宗教と政治は語るなと言われる。
淺野:こういうこと理解しておいて、何かあった時に説明することや、避けることもできるようにしておかなければならない。
小平:日本と朝鮮との間の歴史、太平洋戦争、日本とロシア(北方領土問題)、沖縄問題、日本と台湾、アフリカ外交と欧州の植民地、アラブの国々の発展、日本の近代史・・・など上げてみた。日本の近代史や太平洋戦争は難しい。
西河:過去の話をできるだけしない。未来に向かった話をしなければならない。
淺野:この問題は昔の価値観を現代に引き直しているから問題になる。あの時代の価値観で、議論することは出来ない。
前田:「あなたは歴史を多少勉強していますか」が問われる。