技術経営人財育成セミナー(第25回)変革期のリーダーが学ぶことは何か
社長が学ぶホスピタリティの心
-女性幹部の視点からお伝えしたい女性社員の特性-
加地 照子(かち てるこ)
日時 | 2018年12月4日(火) 18:30〜20:00 (講演60分 討議30分他) |
---|---|
場所 | 一般財団法人アーネスト育成財団事務所内 アクセスへ |
参加費 | 3,000円(終了後の懇親会費用を含む) |
定員 | 最大18名(定員になり次第締め切ります) |
申込方法 | FAX 03-6276-2424 または Eメールoffice@eufd.orgにて |
主催 | 一般財団法人アーネスト育成財団
講演PDF(案内)(979KB) |
ホスピタリティの認識は、航空会社に勤務し、在仏中のフランスへの小旅行から始まりました。当時はそれが何なのかはわかりませんでした。後年、ホスピタリティ学の権威者である服部勝人氏の指導を受け、サービスとホスピタリティは違うこと、ホスピタリティを私は体感してきたことに気づいたのです。くわえて、ホスピタリティ論のほかに実行動に移すためには何が必要なのか悩みました。そんなときマーシャル・ゴールドスミス博士のエグゼクティブ・コーチング直伝コースを受講し、論とスキルを合わせ、他者とともに日々実行してこそ成果に至ることを実感したのです。
今はプロのコーチとしてグローバルに活躍する幹部層の育成と誕生を夢見て「戦略としてのホスピタリティ・リーダーシップ・コーチングUNIT」を提唱しています。
今回は女性幹部の視点から、自己の経験と特に次代を担う女性社員の特性および彼女達が学んでいるこのUNITの効果をお伝えしたいと思います。
加地 照子(かち てるこ) 氏
<略歴>
東京外国語大学フランス語科卒業、日本航空(株)入社。初代女性海外実習生としてパリ勤務。欧州勤務の後都内営業所長を経て中近東クウェート駐在。その後、世界各国社員の人材育成の企画に参画するとともに訓練に従事。女性活躍推進の全社的新規プロジェクトリーダーにもなる。
2003年 公益財団法人21世紀職業財団東京事務所長、本部事業部担当部長。
ホスピタリティ・マネジメント学にて修士号。
2010年 独立、BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、日本ホスピタリティ・マネジメント学会 副会長、日本開発工学会会員。
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ
日本ホスピタリティ・マネジメント学会副会長 加地 照子(かち てるこ)
『社長が学ぶホスピタリティ』
- 女性幹部の視点からお伝えしたい女性社員の特性 -
司会(小平和一朗専務理事):今日は『社長が学ぶホスピタリティの心』、副題としては「女性幹部の視点からお伝えしたい女性社員の特性」ということで加地先生にお願いをした。加地先生は、東京外語大学フランス語科を卒業した後、日本航空(株)に入社し初代の女性海外実習生としてパリで勤務された。
その後、都内営業所長を経て中近東クウェート駐在、世界各国社員の人材育成の企画に参画するとともに
訓練に従事し、女性活躍推進の全社的新規プロジェクトのリーダーにもなられて活躍されてきた先生で
ある。現在は、ホスピタリティ・マネジメント副会長でもあり、日本開発工学会の会員にもなって頂き、
ホスピタリティというキーワードを基に、いろいろとご指導を頂いている先生である。
「『自分は、上司にとって頼りがいのある人材となりたい』『部下からは、ついていきたい
という人材(中間管理職)になりたい』と思っても、女性の場合、あいにく女性の管理職が
傍にいないとか、モデルとなる人がいないことが多い。部下の意見を聞き、部下を尊重する
『1on1コーチング』で学び、気づいて、実践のロールプレイが必要」と講演する加地講師。
講演概要
講演内容詳細 (576KB)
女性社員を部下に持ちたくなる
長年仕事をしていて部下に持つのであれば何を解決したら男性社員が女性社員を部下に持ちたくなるのか。出産・育児などとの両立の問題ではないと思った。
女性自身が気づいていない、他の理由があるのではないかと疑問を持つ。
未来思考のビジネスコーチング
最初に、ホスピタリティ・マネジメント論があれば十分かと自問した。マーシャル・ゴールドスミスの本を読み、ビジネスコーチングはある意味スキルだと分る。
ビジネスコーチングは、未来を見据えるものであり、未来を見据えるから、過去を振り返らない。
ホスピタリティとリーダーシップとコーチング。これが共創すると皆うまい相乗効果が上がるのではないかに気付いた。
女性の特性を探求する
一番目がエイドリアンの書いた『女性の知らない七つのルール』(注1)という本である。
ここでは、七つルール(図1)の中から、二つを紹介する。
(1) できるふりをする
(2) 自分を強く見せる
(3) つらくても継続する
(4) 感情的にならない
(5) アグレッシブになる
(6) 戦う!
(7) 真のチームプレイヤーになる
図1 女性の知らない7つのルール
(1) できるふりをする
男性の上司から「これができるか」とか「この方法を知っているか」と聞かれた場合、男性は先ず「かしこまりました」という答えが多い。しかし女性は「どうすればいいですか」とすぐ質問してしまう。または私にはできないと思って「かしこまりました」とは言わない。そこに違いがあるとエイドリアンは指摘している。
(7) 真のチームプレイヤーになる
男性は、背広を着てネクタイをしている。しかし、女性は無頓着でワンピースで来ている。違和感がある。おしゃれをしているつもりでもお客様に伺うのでは誤解をされるかも知れないことに考えが至らない。男性の背広とネクタイとワイシャツ姿に合う形で行きましょうとエイドリアンはいう。
また、男性はチームプレイヤーだから、男性の仲間に何かあった時には、無意識に助けてる。そういう助け合う男性の心理は、覚えようと同書に書かれている。
男と女の違いを認め個を尊重
女性を育成することに努力をしているサリー・ヘルゲセンとマーシャル・ゴールドスミスの共著の本(注2)が出版されている。本の中で男女の違いを認めつつ、個を尊重するということで、コーチングメソッドと手順は、男性と女性でしばしば異なると言う。
それは女性の知覚スタイルは男性とは異なること、女性は一度に多くのことに気づき周囲の状況を見ながら、細かなシグナルを拾い上げる。私はここがライオンのオスとメスの違いと思う。
ライオンのオスは、敵が来たら自分のファミリーが襲われてしまうので相手に勝つことを考える。しかしメスは、子ライオンのことも見ていないと子供達が食べられてしまうので全体を見る。男性は一度に一つの事しか気づかない。余計なものを排除して一つにじっくり集中する。
このことから女性は360度見渡すレーダーであり、男性はレーザーであるという。良い悪いではなく、男性と女性は違うということ容認することが大事だという。
女性はネットワークを作るのは上手いが活用しない。活用するのを罪悪と思っている。男性は、知り合ったら全部友達だという。ところが女性は、そこまでは行かない。ネットワークの活用を、もっと女性が積極的にならなければいけないと同書はいう。
苦手と思われている6つの事柄
キンカ・トーゲルという学者が「女性は苦手と思われている」ところを書いている。①ビジョンや戦略を語る力。②ネットワークを構築し活用する力。③キャリア移行のマネジメント。④積極性、自信を持つ。⑤健全に関心を集める力。⑥他者に影響を与える力。
励ましてくれるコーチを身近に
女性の場合、自信の種を植え、励ましてくれるコーチを身近に置くことが有効だ。コーチングの神様のマーシャル・ゴールドスミスは、次のように言っている。
「コーチングとは、リーダーが、他者と共に目標に向かって実行し成果をもたらせるよう支援することである」「コーチは支援をすることが役割である」「また一人ではなく他者と共に他者を巻き込んでということが大切である」。
上司にとってみれば部下
女性が、もう一歩先に行くにはこの考え方が必要だ。
中間管理職という立場の自分は上司から見ると部下、一方部下から見ると自分は上司。リーダーになる女性達を前提に考える。
真のパートナーとはどんな人材か
上司は部下が真のパートナーでいて欲しいと思う。真のパートナーとはフォロワーシップのある人材で、対等となるにふさわしい相関関係を持てる人材。ホスピタリティのリーダーシップを持っている人材やコーチング能力のある人材が真のパートナー。中間管理職はトップとメンバー中間に位置。
フォロワーシップを発揮
女性が中間管理職または幹部になるために、その上のリーダーの部長やトップの役員の方と対等となるにふさわしい関係を築いているかということを常に自分に聞く。
アイラ・チャレフは対等と言っているが、対等となる相関関係といった方がふさわしいと思う。
役員になった素晴らしい女性
リーディングカンパニーで役員になった知り合いの女性の素晴らしさは、どこにあるか。25年ぐらいの付き合いがある素敵な女性を紹介する。
①溢れるように人を包み込む暖かさがある。②先入観を持たず人の話をよく聞き、共感を示して褒めたり感謝したり評価したり、叱るということも入る。質問をして助言を行うコーチングの流れを守っている。③お目にかかると、効率的に話をして、用件を早く終わらせたいといった雰囲気が全くない。貴方のための時間ですとの雰囲気がある。相手の現状を聞く。
④目元、まなざしが優しく、笑顔が美しい。しぐさが柔らかい。しゃべり方のスピードがおおらかで明確な滑舌と要を得た話。⑤規則の遵守のみにとらわれない。ルールや過去の習慣にとらわれない。
この素敵な人は、水越さくえさんである。セブン&アイホルディングスの役員まで経験した方。
質疑応答
質問(土山岩手大学大学院):男性はビジネスをゲームと心得ていて役割を演じるという話があったが女性はそのままの自分で向かってしまう。
回答(加地講師):男性は、他者を巻き込むのが上手だ。女性はもっと他者を巻き込まなければならない。そのためには、相手をよく知る。行動スタイルも含めて労を惜しまずに、普段から観察をしなければならない。失敗したらといって、自分を責めてはいけない。
質問(小泉あつまる不動産代表取締役):今2店舗目を作るろうとしている。そこの店長になって欲しいと思う女性に、店長になって欲しいという話をした時、その女性から寂しいと言われた。皆でやっていて楽しいところもあり、そこから自分が外れるということが寂しいと言う。もっと自信を持たせて、積極的にやってもらうにはどのような言葉をかけるのがいいのか、どういう風に話をすれば彼女が積極的になってもらえるのか。
回答(加地講師):ご自身の夢を語ることである。こんなビジョンがある、こんなミッションがあるいうことを、相手の方と共有することが大切である。貴方を尊敬していると思う。リーダーが進みたいと思う方向にならば、私も同じ方向に行きたいと思うと思う。
司会(小平):上司に対してプライベートに近いような質問をしっかりとできるような関係性を持ちなさいという理解で良いか。
回答(加地講師):リーダーシップもホスピタリティも信頼関係がなければ次の段階には行かない。上司と部下がどういう行動をするのかということだ。上司をよく見ているようだけど、意外と見ていない。または、上司が、その上の役員にどんな行動をとっているかを観察していない。相手をもっと観察するということが、意外と女性にはできていなかった。
コーチングで「もっと上の方の素晴らしいところをモデルとして学んでください」というと「急に視野が広がったし、私も将来は幹部になりたい」と変わって来る。
<参考文献>
(注1)エイドリアン・メンデル著、坂野訳(1997)『女性の知らない7つのルール』ダイヤモンド社
(注2) Sally Helgesen, Marshall Goldsmith(2018)"HOW WOMEN RISE"