技術経営人財育成セミナー(第31回)経営学と変化の論理
経営学と変化の論理
- ヒストリカル・アプローチからみる企業経営 -
宮田 憲一(みやた けんいち)
| 日時 | 2025年12月22日(月) 17:00~18:30 (講義60分 討議30分) |
|---|---|
| 場所 | 一般財団法人アーネスト育成財団事務所内 アクセスへ ![]() |
| 参加費 | 3,000円(終了後の懇親会費用を含む)、Zoom参加者(無料) |
| 定員 | 会場参加人員 最大16名(定員になり次第締め切ります)、 Zoom参加者50名 |
| 申込方法 | FAX 03-6276-2424 または Eメールoffice@eufd.orgにて |
| 主催 | 一般財団法人アーネスト育成財団
|
企業はなぜ変わるのか――そして、どのように変わるのか。本講演では、経営史の視点から、経営学領域で重要なテーマであり続ける 、「企業の変化」の論理について考えていく。とりわけ、戦略の歴史性、ダイナミック・ケイパビリティと両利きの経営、イノベーションのジレンマといった戦略論や組織論などの理論と結びつけながら、企業が変化をどのように経験し、新しい方向性を切り拓いてきたのかを考える。
アメリカ企業の戦略転換や、日本のコンテンツ産業におけるイノベーションの軌跡を事例に、戦略思想と戦略構想、経路依存性と経路革新性、組織文化といったテーマを通じて「歴史的に変化する存在」として企業経営をとらえる視点を紹介する。
宮田 憲一(みやた けんいち)氏
<略歴>
2007年明治大学経営学部卒業,同大学院経営学研究科博士前期課程修了,ハーバード大学ライシャワー日本研究所客員研究員を経て,2016年に明治大学より博士(経営学)取得。同年4月より明治大学経営学部助教,20年専任講師を経て,2021年4月より現職。
専門はアメリカ経営史・国際経営史。『経営史学』,『組織科学』, Journal of Evolutionary Studies in Businessなどの学術誌に論文を発表しているほか,2022年に経営史学会・出版文化社賞(本賞)を受賞している。共著に『総合電機企業の形成と解体』(有斐閣),『ケースブック アメリカ経営史[新版]』(有斐閣)などがある。
宮田 憲一(みやた けんいち)
『経営学と変化の論理』
- ヒストリカル・アプローチからみる企業経営 -
変化を起こす仕組みを設計する
令和7年12月22日、財団にて宮田憲一(注1)氏を迎え『経営学と変化の論理- ヒストリカル・アプローチからみる企業経営 -』と題する技術経営人財育成セミナーを開催した。本講演では「歴史的に変化する存在」として企業経営をとらえる視点等が教示された。
質疑応答の中で「M&Aも投資も重要だ。実際に両利きの経営の議論において、M&Aは一つの処方箋であり、対応策である」と回答した。
「企業経営における変化は、まずは本業を守る。本業を守りつつ、新規事業の例外を許す。矛盾をマネジメントするのが経営学」と語る講師の宮田憲一氏
講演概要
講演内容詳細 (944KB)
本講演では経営史の視点から、経営学領域で重要なテーマであり続ける「企業の変化」の論理について考えていく。戦略の歴史性、ダイナミック・ケイパビリティと両利きの経営、イノベーションのジレンマといった戦略論や組織論などの理論と結びつけながら、企業が変化をどのように経験し、新しい方向性を切り拓いてきたのかを考える機会となった。「歴史的に変化する存在」として企業経営をとらえる視点を学んだ。
(1)変化する仕組みを常に設計
変化は必要になってから対応するのでは遅い。必要になる前に変化に向けて取り組まないといけない。自ら変化する仕組みを常に設計することが重要だ。
(2)撤退戦略を組み立てる
新しい事業に入ったときにそれを撤退するとか、本業を撤退することも含めて設計する。どの順番で変化するのかも決めたい。
(3)経営者が変えるのは前提
経営者が変えるのは、事業よりも前提である。変化を考えたときには、もちろん事業も必要だが、新規の事業を探していくことも含めて前提を変えることも重要。企業経営における変化は、まず本業を守る。本業を守りつつ例外を許す。失敗することを良しとして「どれぐらい失敗したらやめよう」と決めるのがマネジメント。
(4)中小企業は素早く変化
大企業に比べて中小企業のほうが、トップ自身が既存事業の責任者かつ新規探索の責任者にもなれるので、トップがどうであるかということで中小企業はかなり左右される。大企業よりも素早く変化の仕組みを作りやすい。
(5)自社をどう変化させるか
リーダーはいろいろ変化がある中で企業は技術の変化の波にさらされる。技術経営をする。企業はマクロ経済の中にいるから経済学も学ぶ。変わらない、変えてはならない軸を作る経営哲学も学ぶ。
変化するためのリーダーは、単に本業のことが分かっているというだけではいけない。本業は信頼する従業員に任せる方がよい。
リーダーはマクロの経済が変化した時、技術が変化した時に我が社はどうすればいいのか。何を変えるのかを学び、自社をどのように変化させていくのかの仕組み作りがリーダーに求められる。
質疑応答(敬称略)
プロダクツ産業とコンテンツ産業
(粟屋 文京学院大学):プロダクツ産業とコンテンツ産業とで戦略の違いはあるのか。私の大学の経営学部でもコンテンツビジネス経営を打ち出している。私自身は製造業に携ってきて物作りは日本の産業を支える力だと思っている。コンテンツ、ポケモンの事例を出されていた。どう思われるか。
(宮田):何を消費しているかという議論が、コンテンツ産業ではある。ここにエビアンがあるが、これをコンテンツで考えたときに、何もない水に対してポケモンのピカチュウの絵を載せると百円で売っていた水が2百円で売れるかもしれない。上乗せの百円の価値は何かと考える。それは世界観を消費しているというもの。基本的に企業のプロダクトは何か、顧客が解決したいことがあり、その機能的価値のために顧客は商品を購入する。水を飲んで喉を潤したいとか、そういったこと。そう考えるとコンテンツは別にピカチュウの絵が付いたからといって、喉を潤したいという機能的価値はない。
ただ、なぜ子供たちあるいは大人も含めて百円高くてもピカチュウの絵が掲載されている商品を買うことがあるのか。
一つの仮説として、そのコンテンツ、キャラクターを通して自分の頭の中の例えばポケモンの世界観あるいは何でもいいが、各コンテンツのキャラクターを消費したいとか、そういったものがあると考えられる。
これは、実証されているわけではない。ただ、仮説としてあり得るというもの。なぜ子供たちはピカチュウがプリントされていない靴とピカチュウがプリントされている靴でピカチュウのほうを選ぶのかの説明がなかなか難しい。コンテンツ産業には、その世界観をどのように広げていくかというマネジメントが求められている。
海外での企業文化の形成
(下斗米):多国籍企業の場合、企業文化、組織文化を作るとき、どこまで我を通せるかは大事だ。他国でどう維持するのか。株主との関係を大事にし、起業時の歴史を大事にできるかは別である。
(宮田):先に組織文化の方から。社員は、国の違いはもちろんあるが、多国籍企業の各支社を回ると国は違うのに組織文化はかなり似ているという。それぞれの支社にアメリカでは、こうであるという文化が、ルールがあるという。インテルはこうやっていくという前提が、研修などを通じて各国の支社に共有されている。
二つ目の株主が許してくれないのではないか。それはあると言われている。例えばGEが崩壊していくときに物言う株主がGEの取り組みを許容できなくなった。成功している限り株主は何も言わないともいえる。
創業家の考え方が伝えられている
司会(小平):森下さんは老舗企業を研究されていますが。
(森下 日本経済大学):創業家の人がいなくなって後退していったというのがあった。日本の長続きする企業はトヨタの豊田綱領やパナソニック七精神がある。そういうのは日本独自なのか。ナラティブに関係してくるのか。
(宮田):関係してくると思う。追い出されたスティーブ・ジョブズみたいな人、残っていた従業員は支持していた。創業者が亡くなって何十年も経っても、我々は家族だと大企業になってもいう。創業者がどのような人であったか、こう考えていたとか。
それから80年ほど経ても創業者を使い続けて、ナラティブとして使ってまとめていこうということはあった。日本みたいにすごく脈々と受け継がれる家訓みたいなものはない。
歌舞伎、グローバル化のチャンス
(小平):山下さん、文化面もありましたが、何か質問頂けたら。
(山下シオン ライター):歌舞伎に関わっているが、あれだけヒットする映画ができたのに、相変わらずムック本を作りたいと出版社に提案しても動かない。今までの売れ行きベースで判断される。グローバル化するチャンスなのに、どうして追っかけないのか。どうアプローチするのが良いか。
(宮田):歌舞伎、アカデミー賞にノミネートされた。ローカルがグローバルになるのがクリエイティブ・インダストリーと言う。何がポイントかは議論がある。一つはコンテンツは結構アメリカを経由する。なぜポケモンがヒットし、世界中に広まるのかというと、アメリカに行くことで英語化され、英語であれば多くの人が見ることができる。アメリカはコンテンツの重要な市場で世界へと流れる動機になる。アメリカでヒットすることがグローバル化の重要な起点だと言われた。
今回を契機に、逆に日本の市場関係者が少し時差を持って、逆に目を開くというか、そういう可能性はあり得ると思う。どうやって企業にアプローチするかは難しいところである。
良くするために考え変化させる
(西河):中小のほうが社長として動ける。変化というのは社長がいつも365日24時間、会社を良くするためには何をしたら良いかを考える。実際に現場で職人さんと話をして困ったこと全部変える。会社が良くなることは、提案させる。大きくなると社長自体も意見を聞けなくなる。
(宮田):経営の実際を伺うことは歴史を研究していても意外になかなかないので、そういうところなんだと実感する一方で、そういったことができる社長がなかなかいない。365日変化を考えている社長が、どれぐらいいるかとも思う。こういったことをする社長が少ないから、少なくともアメリカ企業はどんどん潰れるというか、衰退して、新しい企業が出てくる新陳代謝がおきている。一方で、日本は新陳代謝が少なく長寿になっていく理由は経営者の存在がアメリカと少し違うのかもしれないと今伺いながら思った。
(西河):アメリカの経営者は、報酬を高くもらおうとする。
(宮田):アメリカと日本の比較を授業でもするが何か違う。トップはトップ、下は下みたいな何か区分けがある。
(西河):日本は家族経営である。
(宮田):それが日本の強みというか、アメリカにないからこそ、アメリカにできないことをやっているというところは何か。改めてお話を伺いたく思う。
懇親会でも熱い議論が続いた。
左から下斗米秀之、粟屋仁美、森下あや子、西河理事長、宮田(講師)、小平、淺野昌宏


