技術経営人財育成セミナー(第32回)鎌倉紅谷のブランド構築戦略

鎌倉紅谷のブランド構築戦略

有井 宏太郎(ありい こうたろう)

日時 2026年4月6日(月) 17:00~18:30 (講義60分 討議30分)
場所 一般財団法人アーネスト育成財団事務所内 アクセスへ
参加費 3,000円(終了後の懇親会費用を含む)、Zoom参加者(無料)
定員 会場参加人員 最大16名(定員になり次第締め切ります)、 Zoom参加者50名
申込方法 FAX 03-6276-2424 または Eメールoffice@eufd.orgにて
主催 一般財団法人アーネスト育成財団

講演PDF(案内)(511KB)

企業にとってブランドとは何か。本講演では創業72年を迎える菓子屋、鎌倉紅谷の事業承継から約20年の歩みを振り返り、経営者として直面してきた葛藤、迷い、試行錯誤と意思決定の積み重ねを率直に語る。
企業の存在意義をどう再定義し、何を変え、何を守ると決めたのか。「常においしさを追求しつづける」という理念と、「“おいしい”の先にある気持ちを大切にする」というビジョンを掲げ、商品価値、店舗体験、組織づくりにどう落とし込んできたのかの暗中模索の歩みを共有する。
事業成長と理念の追求に揺れながらも、重ねた判断の過程を通じ、ブランドを理論ではなく日々の選択と行動の蓄積として捉える視点を提示する。

【講師略歴】

有井 宏太郎(ありい こうたろう)氏

<略歴>

1979年生まれ。英語の専門学校とイギリス留学を経て、2001年に合資会社 紅谷(現、株式会社 鎌倉紅谷)に入社。2003年に専務、2008年に3代目社長として代表取締役に就任。
2018年に横浜マーチャンダイジングセンター(MDC)からの依頼で当財団が実施したMDC技術経営塾の修了生。

有井 宏太郎(ありい こうたろう)

『鎌倉紅谷のブランド構築戦略』

売る力を養うとブランド力が増す
おいしいの先にある気持ちを一番大切に

令和8年4月6日、財団にて有井宏太郎(株)鎌倉紅谷代表取締役を迎え『鎌倉紅谷のブランド構築』と題する技術経営人財育成セミナー(第32回)を開催した。
本講演では、真の老舗をめざし、本当に大切なものを守り高めてきたブランド構築に関する実践的な行動についてお話を聴くことができた。

有井講師

鎌倉紅谷は「常においしさを追求しつづける」という理念と「おいしいの先にある気持ちを大切にする」というビジョンを掲げ、商品価値、店舗体験、組織づくりにどう落とし込んできたのか。暗中模索の取り組みをしてきたと語る講師の有井宏太朗。事業成長と理念の追求に揺れながらも重ねた判断の過程を通じブランドを理論ではなく日々の選択と行動の蓄積と捉えてきた。

ページの先頭へ戻る

講演概要

講演内容詳細 (813KB)

鎌倉紅谷にとってブランドとは何か。創業72年を迎える菓子屋鎌倉紅谷の事業承継から約20年の歩みを振り返り、経営者として直面した葛藤、迷い、試行錯誤と意思決定の積み重ねを語った。
企業の存在意義を再定義し、何を変え、何を守ると決めたのか。事業成長と理念の追求に揺れながらも重ねた判断の過程を通じブランドを理論ではなく日々の選択と行動の蓄積と捉えてきた。

[講演]

(司会 小平専務理事):技術経営人財育成セミナー第32回は『鎌倉紅谷のブランド構築戦略』と題し有井宏太郎社長を講師にお迎えした。有井の工場が横浜の流通団地にある。そこの組合から呼ばれて塾の講座と同じ内容で8年前に取り組んだことがある。有井はその塾の塾生だった。当時からブランドについてよく学んでいて、ブランド構築に関わるしっかりとしたお考えをお持ちであった。今日は成長した鎌倉紅谷のブランド構築戦略について、ご講演を頂く。

(講師 有井):こんにちは、鎌倉紅谷の有井と申します。塾では「経営塾ってこんなにしんどかったっけ」と思いながら、たくさん刺激を受けて学ばせて頂いた。
確か最初の小平先生のご挨拶の際に「この研修の価値はいくらぐらいだと思いますか」と問いかけられ「学びの価値を決めるのは皆さんですよ」とおっしゃって「確かにそうだな」と思い、結構ドキッとする問いかけであった。
それだけの価値をどう作り出したらいいのかと考えながら、最終回まで受講した記憶がある。今日もできるだけ皆さんに何か残るお話ができればと思う。
資料の中では「戦略」と書いているが「戦略通りに進めていくと必ずこうなる」ということではなく、「やらなきゃ」「やりたいから」ということの方が強かった。
「こうやれば絶対うまくいくセオリー」とか、学術的なものを皆さんにお伝えできないが、鎌倉紅谷が歩んできたことをお伝えできればと思う。
弊社は、どちらかというとB2Cビジネスであるが、B2Bビジネスの方にも参考にして頂けると思う。

第一創業期 創業から2008年
鎌倉紅谷は1953年に父と祖父が、鎌倉で一緒に立ち上げたお菓子屋である。当時から「おいしさ」にはすごくこだわっていた。
今年で創業72年なので、老舗というにはまだである。「クルミッ子」「鎌倉だより」「あじさい」が主な商品になっている。
クルミッ子、昔は源頼朝さんの包装紙に包まれていた。鎌倉土産にしたいからということではなく父が頼朝さんの大ファンで、大好き過ぎてパッケージにした。中を開けたらリスくんが出てくるという感じだったので、外は渋くて中はかわいいみたいな感じである。

第二創業期ブランドリニューアル
社長に就任した2008年からである。第一創業期の「おいしさ×鎌倉」のお菓子というところは残しつつ、トキメキとかSNSの活用でファンの創造を頑張る。
「自流ではなく、時流」を見つめる視点を持つ。ブランドリニューアルをやった。パッケージのデザインを渋い商品デザインから、かわいらしい、より中身がお菓子であることが想像しやすいパッケージに全部変えた。
頼朝さん包装は、写真1個で見ると「なるほど」であるが、お店にずらっと並んでいると入った途端に頼朝さんが何十人も一斉に出迎える。結構「ウっ」という感じがあったので受け入れやすい状態になるようデザインを変更した。

第三創業期 家業から企業へ
リスくんコーポレートアイコンに

2018年、第三創業期。まさに私が入塾したタイミングで「家業から企業へ」という課題に取り組んだ。ファミリービジネスから企業としての意識を持って事業を成長させる組織作りをやって「真のブランド企業」を目指した。
このときに2回目のブランドリニューアルをした。1回目のブランドリニューアルから10年経ったので、だいぶ認知も広がった中でリスくんを正式にコーポレートアイコンに昇格させた。ブランドロゴとして、パッケージやパンフレットにも登場させパッケージもリニューアルした。

手作りよりもおいしさにこだわる
お菓子についての考え方であるが「手づくりよりもおいしさにこだわった作品を届ける」という位置づけをした。代表に就任した当時のパンフレットに「手づくりにこだわった」といったワードをたくさん使っていた。しかし、ある日、同じように「職人の手作りにこだわった」ということをすごく大々的に打ち出しているお店のお菓子を頂く機会があった。しかしそれが私の口には全然合わなくて衝撃というかハッとした。「手作り」と書いてあるのにこんなに美味しくないというか「手づくり」と「おいしさ」はイコールじゃない。急に「手づくり」をアピールしていたことが、恥ずかしくなった。「手づくり」とは何か一から考え直した。「手づくりではなくおいしさにこだわっていた」に気が付いた。「手づくり」ではなく「おいしさにこだわっている」を打ち出すことにした。

ブランディングとマーケティング
ブランディングとマーケティングの推進を色々やり始めた。クッキー缶もいつかやりたいと考えていた。色々なお菓子屋さんがクッキー缶をやっていたからだ。妻が副社長兼企画部の部長を務めている。彼女の発案でクッキー缶やカラー缶、最初は茶色缶から始まった。途中から毎年新しいカラーを出している。すごく人気を頂いている。

顧客の期待を越えていく
「やれることは全てやる」というよりも「お客様に喜んで頂けると思えることを丁寧に積み重ねて期待を超えていく」という考えをもっと喜んで頂けるか」を常に考えながらやっている。
「やれることを全てやる」だとお客様の期待とずれたことも入って来る可能性もある。「どうやったら喜んで頂けるかな」ということを常に意識してやっている。
こういった取り組みをやってきたことで連日かなり各店舗に行列を頂いくような状況になった。当社は12月決算で就任したときは4億弱だったが、25年末締めで、74億まで行くことができた。塾に入っていた18年は23億円位だった。

有井氏

「お客様と仲間への感謝を忘れない」と語る有井氏

鎌倉紅谷の経営指針
弊社の経営指針を報告する。経営理念はお客様へのお約束で社訓は社員への行動指針である。
【経営ビジョン】「おいしい」の先にある気持ちを一番大切にする
このビジョンは父の頃からあったわけではなく、私が事業承継をした数年後に制定した。
経営理念という考え方、概念があるということを知って、本を読んでいて「うちにないな」「ちゃんと決めなきゃ」となって、最初は何か取ってつけた内容だった。あまり中身がなくて社内に浸透しなくて挫折をした経験がある。
何が駄目だったか。本質を全然捉えていなかったと思う。創業のマインドだとか、全然中身がない言葉だけになってしまっていた。
「父は普段どんなことを話していたか」とか「20年、30年位続いている社員やパートさんは、何でこんなに長く続けてくれているのかな」とか色々考え、本人たちに聞いてみたりしながら「そうか、だからか」といった気付きがありそれらを言語化していって、ようやくたどり着いたのが「常においしさを追求し続ける」「心を込めたお菓子とサービスで「笑顔」と「しあわせ」をつくる」という経営理念と「昨日より今日をより良くするため向上心を常に持つと、「人の和」なくしておいしいお菓子はつくれない」である。

ターゲット層 27歳から45歳の女性
ターゲットは、27歳から45歳の女性に設定している。実際はもう少し年齢層上の方が多いと思っている。8年ぐらい前にマーケット調査をして位置づけをした。
設定しておくだけで良いことがある。この年齢層の方たちが、すごくトレンドに敏感で発信力もある。27歳より若い方達も憧れを持ってこのゾーンに入ってくる。このゾーンよりも上の方達もトレンドに敏感で入ってくれる。

ブランディングとマーケティング
ブランディングとは「伝えたいことを整理して正しく伝えていくこと」これは中川政七商店の前の社長が本に書かれていて共感したので使わせてもらっている。
マーケティングは「自分たちがやりたいことと、お客様が求めていることのギャップがどこにあるのかを見つけて埋めていく活動」と考えている。
そもそも本当にこだわるべきところはどこか。これは多分各社各様だと思うが、整理していくことから始めていくのが良い。自分たちのこだわりなのか、とらわれてしまっているのか。考えていくと頭が整理される。

ページの先頭へ戻る

技術経営人財育成セミナー

ページのトップへ戻る